結婚したくてもできない、子供が欲しくても産めない
国税庁の2019年の調査では、正規雇用の平均給与が503万円に対して、非正規雇用が175万円であり、この格差から、結婚したくてもできない、子供が欲しくても産めないことが社会問題となっています。
そこで注目されるようになったのが同一労働同一賃金という価値観です。これは、正社員と非正規社員との間にある、待遇面の不合理な格差を禁止する新しいルールです。現在、すでに中小企業に対しても施行されており、すべての企業が適用対象となっています。
その中心となる考え方が均等待遇と均衡待遇です。
均等待遇とは:
同じ業務内容であれば、同じ待遇にすること。
均衡待遇とは:
業務内容に違いがあれば、違いに応じた待遇にすること。
実際のところ、正規社員と非正規社員が行っている仕事内容がほとんど同じだというケースはよくあります。これまでは正規社員が非正規社員よりも待遇面で優遇されて当然と考えられてきたからです。しかし、そうした固定観念を変える時がきました。
待遇差はすべて問題視されるのですか?
とはいえ、待遇差が一切認められないわけではありません。例えば激務をこなしている人に有利な条件を与えるのであれば、全然問題ないのです。一律に待遇差を否定するのではなく、それが合理的かどうかです。
チェックされる人は、同じ事業主に雇用される全ての通常労働者です。なお、待遇差の比較は、以下の枠組み間で行われます。

- 短時間労働者と有期雇用労働者
- いわゆる「正規型」の労働者
- 事業主と「期間の定めのない労働契約」を締結しているフルタイム労働者
短時間労働者:
労働契約期間の有期・無期に関わらず、1週間の所定労働時間が同一の事業主雇用される通常の労働者に比べて短い労働者
有期雇用労働者:
期間の定めのある労働契約を締結している労働者
適切かどうかを判断される待遇はどれですか?
適切かどうかをチェックすることになる待遇は何でしょうか?
一言で言えば、『全て』です。例えば、基本給・賞与・手当・福利厚生・教育訓練・安全管理。もしこれらに待遇差があるのであれば、ある理由を“客観的・具体的”に説明できるようにしておかなくてはいけません。そして、労使でその認識を共有しておくのです。
チェックする際に考慮するのは次の点です。
- 待遇を与えた理由
- 待遇が与えられるための要件
- 業務内容の違い
- 責任の違い
- 配置変更の範囲
例)通勤手当
通勤手当は、雇用形態で差をつける合理的な理由がなく、アルバイトにも付与する必要があります。責任や能力に関係なく、同じように通勤して、同じように交通費を負担しているからです。
待遇差がある理由の説明ができないと、フェアではないと判断されます。つまり、同一労働同一賃金のルールに違反しているということです。
例)昇給(勤続による能力向上に応じて行うものに限る)
同じ能力の向上であれば同じにし、違いがあれば違いに応じた昇給をしなくてはいけません。
例)特別休暇(慶弔休暇)
特別休暇は、アルバイトにも付与する必要があります。ただ、不利益変更とはなりますが、特別休暇をなくすこともできます。
例)基本給
基本給は、業績・勤続年数・能力・経験・成果に応じて支払うものです。なので、これらに違いがなければ同じにし、違いがあれば違いに応じた支給をしなくてはいけません。つまり、問題は、待遇差が生まれたことが合理的であるかどうか。例えば、能力が高い正社員の基本給を高く、低い非正規社員の基本給を低くするというのであれば問題ありません。
例)賞与
賞与を支給する目的が『業績への貢献』というのであれば、パートさんは何の貢献もしていないということになります。この場合、パートさんにも貢献度に応じた賞与を支給しなければ、同一労働同一賃金のルールに違反します。
なお、業務上の責任がすごく重い場合と、すごく軽い場合とで支給額を変えるのであれば問題ありません。
急速な人口減少により、今後、益々人材獲得競争は激化していきます。「正規」と「非正規」の理由なき格差を埋めていけば、採用の際、魅力ある職場と評価され、人材の確保につながります。それが業績の向上につながり、利益の増加になっていく。働き方改革により、魅力ある職場を作りましょう。
LSO労務管理事務所
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