アルバイト従業員が悪ふざけ投稿。その事後対応。

初動対応は

コンビニや飲食チェーンで、アルバイト従業員などが悪ふざけをした写真を店内で撮影、ツイッターなどに投稿し、炎上する騒ぎが相次いでいます。

具体的な事例で考えます。

従業員が飲食店内で業務用冷蔵庫に入って「悪ふざけ動画」をSNSに投稿。それがマスコミに広く公開され、影響でこの店は一時閉店。食品破棄の他、冷蔵庫の消毒を行うこととなりました。しかもその後の数か月、風評被害で売り上げに影響が出ました。

会社としては、削除される前に、その「悪ふざけ動画」をプリントしましょう。「パソコン画面上の映像」をそのまま録画できる「キャプチャーソフト」を使うと便利です。その上で事実関係の調査、そして本人へのヒアリングを行います。

『懲戒解雇』にできるかどうか

労働者と会社が「労働契約」を結べば、労働者は「会社に不当な損害を与えないようにする義務」を当然負うことになります。なので、たとえ勤務時間外であっても、会社の名誉や信用を損なう行為・不当に損害を与える行為は許されません。

とはいえ、悪ふざけ動画をSNSに投稿したから直ちに「懲戒解雇」が可能というわけではありません。「懲戒解雇」がふさわしいかどうかは、一律に決められるものではなく、具体的な事情に思いを巡らせ、それぞれ判断する必要があります。

また、あらかじめ就業規則で「懲戒処分の種類」や「どのような場合に懲戒処分を受けるか」を定めておくことも必要です。「会社の名誉、信用を失墜させる行為」が懲戒処分の対象となると規定してあるか確認してみましょう。

その上で、見定めです。その際に考慮する視点は、懲戒解雇が裁判官が認定した社会一般の常識に適っているか、悪ふざけの程度、会社の社会的信用を失墜させた程度、企業秩序を乱した程度です。

解雇・減給・出勤停止・降格など、「どの懲戒処分にするか」を決める際に考慮するのは、投稿の内容・業務に与える影響・投稿の対象・投稿時間が就業時間内かどうか・会社側の従業員の管理状況などです。

今回のケースは、飲食店における食品の衛生上の問題を生じさせる投稿です。ネット上で誰もが簡単に見られる状態であり、お店が一時閉店となっていることも考えると、解雇も視野に入れた検討がなされる事案といえます。

とはいえ、「懲戒解雇」は労働者の死刑判決とも言うべき影響があり、どんなに悪質であっても高い紛争リスクを伴う。なので、あえて行わないことにする企業が多いです。

『損害賠償請求』ができるかどうか

次に、従業員に対して『損害賠償請求』ができるかどうかを考えてみます。『損害賠償請求』とは、相手が契約を守らなかった、または違法な手段を用いたために損害を受けたとして、金銭的な補償を求めることをいいます。

「損害賠償請求」ができるかどうかは、「誠実義務」の違反の程度によります。つまり、「会社の正当な利益を不当に侵さないように配慮する義務」をどの程度果たさなかったで判断するのです。仮に従業員に過失があったとしても、営業していれば事件の発生が一定の確率で発生するような事案である場合、認められません。

では、今回のケースでは認められるのでしょうか。

結論から言うと、「誠実義務」違反の程度がひどく、しかも「故意にやった行為」といえますので、損害賠償請求も考えられるケースです。ただ、認定されるのは限定的。具体的な「損害」と「その因果関係」が証明できる範囲に限られます。「店舗の消毒費用」・「清掃や食材を廃棄したこと伴う費用」などは認められても、「店舗を開鎖したことに対する損害賠償責任」が認められるのは難しいと思います。

大事なのは、転ばぬ先の杖。「トラブルが実際に起きた後にどうするか」ではなく、「トラブルが起こる前に予防する」ことが大切です。従業員に対して、就業時間中のスマホの利用を禁止し、会社のパソコンは業務使用に限定しておく。SNSに対するガイドラインを作る。そして「会社の不利益につながる行為」を行わないように従業員教育を徹底する。そういった「日常の管理」が大切です。

これでは納得いかないとお感じになることも多いと思います。ですが、いくら正しいことを言っていても、みんなが共鳴しないのであれば踏みとどまることも大切。弊所はそのように考えます。

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