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KUNO について

特定社会保険労務士


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部下に成長意欲や向上心が感じられない。

「もっと成長したい」と言わない部下は、なぜ生まれるのか

① 経営者の悩み

「資格取得の補助も出すし、研修にも行かせてあげてるのに、どうしてうちの子たちはもっと貪欲になれないんだろう…」

ある製造業の社長は、ため息まじりにそう漏らしました。

真面目に働いてはくれる。遅刻もしないし、任せた仕事はきちんとこなす。けれど、面談で「今後どうなりたい?」と聞いても、返ってくるのは「今のままで大丈夫です」という一言だけ。

叱るような問題があるわけではありません。むしろ優等生です。だからこそ社長は、何にどう手を打てばいいのか分からず、一人で抱え込んでいました。

多くの経営者様が、夜な夜な同じ悩みを繰り返していらっしゃいます。「意欲を出せ」と言っても、社員の心には響かない。そんなもどかしさは、決して珍しいものではありません。

② なぜ起きるのか(心理・労務の視点)

この問題、実は「本人のやる気の問題」だけで片づけてしまうのは早計です。背景には、心理面と仕組み面、両方の要因が隠れています。

心理的要因:

過去に高い目標を掲げて失敗し、上司から強く叱責された経験があると、人は「目立たず、失敗しないこと」を無意識に安全策として選ぶようになります。

これは心理学で「学習性無力感」と呼ばれる状態に近く、本人の資質ではなく、過去の経験によって後天的に作られたブレーキです。

例えば、

  • 頑張っても評価されなかった。
  • 新しいことに挑戦して失敗したら責められた。
  • 上司から否定されることが多かった。
  • 「余計なことはするな」と言われ続けた。

このような経験が積み重なると、人は次第に

「挑戦しない方が安全だ」

と学習してしまいます。

その結果、

「もっと成長したい」ではなく、

「失敗したくない」という気持ちが強くなってしまうのです。

一方で、

  • 挑戦を認めてもらえた。
  • 小さな成功を一緒に喜んでもらえた。
  • 失敗しても学びとして受け止めてもらえた。

そんな環境では、人は自然と

「もっとできるようになりたい」と思えるようになります。

つまり、

「成長したい」という意欲は、個人の資質だけで生まれるものではなく、職場の文化によって育まれるものでもあるのです。

だからこそ、管理職に求められるのは、

「なぜ成長したいと思わないのか」と責めることではありません。

「この職場は挑戦しても大丈夫だ」と感じられる環境をつくること。

その積み重ねが、自ら学び、自ら成長しようとする社員を育てていくのです。

労務・仕組み的要因:

評価制度が「挑戦した過程」ではなく「結果」だけを見ていると、社員は挑戦するだけ損だと学習してしまいます。

また、キャリアパスが不透明で、成長した先に何があるのかが見えない会社では、そもそも「成長する意味」を見出しにくいのです。

つまりこの問題は、社員の心理的なブレーキと、会社の評価・キャリアの仕組みが噛み合っていないときに起こります。どちらか一方だけを直しても、根本的な解決にはつながりません。

③ 今日からできる対策

いきなり大きな制度改革をする必要はありません。まずは小さな一歩から始めてみてください。

  1. 1on1で「嬉しかった瞬間」を聞いてみる

    「なぜ成長しないの」と問い詰めるのではなく、「仕事でやっててよかったと思う瞬間はどんな時?」と尋ねてみましょう。

    そこに、本人が本来持っている意欲の種が隠れています。
  2. 評価項目に「挑戦したプロセス」を加える

    結果だけでなく、挑戦した過程を評価に反映させる仕組みを、まずは一つだけでも見直してみてください。

    失敗しても評価が下がらないという安心感が、次の一歩を後押しします。

ハードルは低くて構いません。まずはここから始めてみましょう。

④ 社労士としての一言

経営は孤独なものです。人と組織の問題には、教科書通りの正解が見つかりにくいものですよね。

でも、こうして悩んでいらっしゃること自体が、社員と真剣に向き合っていらっしゃる証拠だと、私は思います。

仕組み(評価・労務)を整えれば、社員の心理的な安心感も変わり、会社の未来も必ず変わっていきます。一人で抱え込まず、いつでもお気軽にご相談くださいね。


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同じミスを何度も繰り返す部下

なぜ人は同じ失敗を何度も繰り返してしまうのか

誰でも失敗をします。

しかし、不思議なことに、
同じ失敗を繰り返す人と、
その失敗をきっかけに成長する人がいます。

その違いは、「反省」と「後悔」の違いにあります。

『後悔』は、自分を責めること(▶自己否定)

失敗すると、

「自分はなんてダメなんだ。」
「どうしてまた同じことをしてしまったのだろう。」

と、自分を責め続ける人がいます。

もちろん、「ごめんなさい」という気持ちに嘘は一切ありません。

しかし、自分を責めるだけでは、なんの生産性もないのです。

「次にどう行動すればよいか」を考えていないと、
同じ状況になったときに、また同じ失敗を繰り返す。
そして、そのたびに後悔し、また自分を責めるという悪循環に陥るのです。

『反省』は、次の行動を考えること

一方、本当の反省とは、

「次に同じ状況になったら、どう行動すればよいだろう。」

と考えることです。

失敗の原因を振り返り、「改善策」を考え、次の行動を変えていく。

だから次回同じ状況になったときに適切に対応できるのです。

同じ苦しい経験でも、その後の人生は変わる

失敗という体験は、誰にとってもつらいものです。

しかし、その体験をどう扱うかで、その後の人生は大きく変わります。

自分を責め続けるだけなら、

  • 悲しみ
  • 怒り
  • 後悔

といった感情が心に残ります。

そして、

「あの出来事のせいで、自分は不幸になった」と思うことになります。

反対に、その経験から学び、

「次はこうしてみよう」と考え続ける人には、
「感謝」が残ります。

「あの失敗があったから、今の自分がある。」

と思うからです。

人生を変えるのは失敗ではなく、その後の考え方

世の中を恨み続ける人がいます。

一方で、常に感謝で生き続ける人もいます。

この違いは、「起きた出来事」そのものではありません。

その出来事をどう受け止めるかにあるのです。

同じ出来事でも、受け止め方次第で
「人生を恨む理由」にもなれば、
「人生に感謝する理由」にもなるのですから。

では、ここであなたにお尋ねします。

誰でも失敗は避けられないものです。

そして挑戦する人ほど、相対的に失敗して恥をかく回数も多くなります。
そう、「挑戦したから」こそ、沢山の苦痛を味わうのです。

では、失敗しないように挑戦をやめるべきですか?

いいえ。逆です。
その苦痛が沢山の「感謝」を連れてくるからです。
そして「喜び」も。
昨日はできなかったことが、今日はできるようになるからです。

もし現在どんどん不幸になっていると感じているのなら、
神様が「あなたの生き方は間違っていますよ」「早く気づきなさいよ」
とメッセージを送っている。

そうは思いませんか?


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勤務態度不良を理由とした普通解雇。有効性をめぐる争い。

「何度注意しても、まったく変わらない…」

建設会社を経営するAAさんは、一人の社員の対応に頭を抱えていました。

その社員は、遅刻や無断離席が目立ち、作業中に私用のスマートフォンを頻繁に操作するなど、勤務態度に問題がありました。

上司が何度注意しても、その場では「分かりました」と返事をするものの、数日もすると元通り。同僚からは、「真面目に働いている人が損をしている」と不満の声が上がり、現場全体の士気にも影響が出始めていました。

AAさんは、「これ以上放置すれば、会社の規律が保てない」と判断し、その社員に普通解雇を言い渡しました。

ところが数週間後、その社員は代理人を通じてこう主張してきたのです。

「勤務態度が悪いというだけで解雇するのは不当です。解雇は無効なので、未払い賃金を支払ってください。」

AAさんは驚きを隠せませんでした。

「何度も注意した。それでも改善しなかった。会社として当然の判断をしたはずなのに、なぜ解雇が問題になるのだろう。」

しかし、詳しく確認してみると、会社には大きな落とし穴がありました。

口頭で注意したことは何度もありましたが、その記録は残していませんでした。

改善指導の内容や日時、本人の反応を記録した書面もなく、始末書や注意書もありません。

さらに、就業規則には勤務態度不良に関する懲戒や指導の基準は定められていましたが、改善の機会をどのように与えるかについては具体的な運用がなされていませんでした。

つまり、「改善の機会を十分に与え、それでも改善されなかった」という事実を客観的に示す証拠が不足していたのです。

AAさんは、この経験から痛感しました。

勤務態度に問題があることと、直ちに解雇が認められることは、まったく別の問題だったのです。

解決のポイント

勤務態度不良を理由に普通解雇を検討する場合は、いきなり解雇を選択するのではなく、改善指導を積み重ねることが重要です。

注意や指導の内容を記録として残し、必要に応じて始末書や指導書を交付し、改善の機会を十分に与えたことを証拠として残します。

そのうえで、就業規則に基づき、注意・指導・懲戒と段階的な対応を経ても改善が見られない場合にはじめて、解雇の有効性を主張しやすくなります。

解雇の成否を左右するのは、経営者の不満ではありません。会社がどれだけ公平な手順を踏み、その経過を客観的な証拠として残していたかにかかっているのです。


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セクハラの訴えがあったが、事実確認の仕方が分からなかった

「誰にも言えないまま、ここまで来ました」

ある商社を営むAAさんのもとに、経理部門の女性社員から、思い詰めた表情での申し出がありました。

「部長から、業務中に必要以上に距離を詰められたり、個人的なメッセージを繰り返し送られたりしています。ずっと悩んでいたのですが、もう限界です」

AAさんは、言葉を失いました。その部長は、入社以来会社を支えてきた古参社員であり、AAさん自身も長年信頼を寄せてきた人物だったからです。「本当だろうか」という戸惑いと、「もし本当なら、なぜもっと早く言ってくれなかったのか」という思いが、同時に押し寄せてきました。

事の重大さに動揺したAAさんは、その日のうちに部長を呼び出し、単刀直入に問いただしてしまいました。部長は強く否定し、「濡れ衣だ」の一点張り。話は感情的な対立へと発展し、女性社員は、自分の訴えが十分に受け止められないまま事態が表面化したことに深く傷つき、しばらく休職することになってしまいました。

AAさんは、後になって気づきました。真実を語っていた人を、正しい手順を知らなかったせいで、かえって追い詰めてしまっていたのだと。

この経験から、AAさんは一つの教訓を得ました。誠実な気持ちだけでは、ハラスメントの事実確認は成立しないということです。

ただし、重要なのはここからです。

実際のハラスメント被害がある一方で、叱責や人事評価への不満などを背景に、事実と異なる申告がなされるケースも、決してゼロではないということです。「訴えがあったから加害者」「否定したから潔白」と決めつけることは、どちらも大きな誤りです。

被害を訴えた社員の話は真摯に受け止める必要があります。しかし、それは「事実である」と決めつけることとは異なります。同様に、訴えられた社員の否定だけを鵜呑みにすることも避けなければなりません。

企業が守るべきなのは、「被害者を守ること」と「冤罪を生まないこと」の両方です。そのためには、証拠や証言を丁寧に積み重ね、誰に対しても公平な調査を行うことが何より重要になります。

ハラスメント対応で会社が最も避けるべきことは、「思い込み」で判断することです。

被害を軽視することも、訴えだけで加害者と決めつけることも、どちらも会社に大きな損害をもたらします。

だからこそ必要なのは、感情ではなく手順です。あらかじめ対応フローを整え、イデオロギーが一方向に偏っていない専門家を交えながら公平に事実を確認すること。それが、被害者も、訴えられた社員も、そして会社そのものも守る最善の方法なのです。

※弁護士や社労士も人間です。色々な思想を持った人がいます。


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業務態度に問題があるのに、法律を盾に強気な社員がいた

「それ、違法ですよね」その一言に、萎縮していた日々

あるIT企業を営むWWさんの現場では、社員XXさんの存在が、次第に大きな悩みの種になっていました。納期の遅れ、クライアントへの対応不備が続いていましたが、上司であるYYさんが何か指摘しようとするたびに、XXさんは決まってこう切り返しました。

「それ、パワハラですよね」「労基署に相談しますよ」「不当な扱いをしたら、訴えますから」

YYさんは、法律の細かい知識に自信がありませんでした。本当に違法な指導になってしまうのだろうか。もし本当に訴えられたら、会社にどれほどの影響が出るのだろうか。分からないという不安が、それ以上踏み込む勇気を奪っていきました。

やがて、誰もXXさんに何も言わなくなりました。当然、業務態度は変わりません。それどころか、「何を言っても大丈夫だ」と、態度はさらに大きくなっていきました。真面目に働く他の社員たちは、その様子を黙って見つめ続けていました。

ある日、優秀な若手社員が、静かに退職を申し出ました。理由を尋ねたWWさんに、その社員はこう答えました。

「頑張っても、サボっても、同じ扱いなんですね、この会社は」

WWさんは、ようやく現実を直視しました。恐れていたのは「法律」そのものではなく、「法律を知らない自分自身」だったのだと。

WWさんは、顧問の社会保険労務士に相談し、一つひとつ事実を確認していきました。業務態度の不良に対して、事実に基づいた指導や注意を行うこと自体は、何ら違法ではありません。むしろ危ういのは、感情的な暴言や、手順を踏まない突然の処分であって、”言葉で怯んで何もしないこと”こそが、会社を最も守らない選択だと分かってきました。

対策として押さえるべき点は、次の通りです。

まず、「それ、違法ですよね」という言葉と、実際の法的リスクを切り離して考えることです。ハラスメントの成立要件も、処分の正当性も、明確な基準があります。感情的な一言に、経営判断を明け渡す必要はありません。

次に、指摘や注意はその場限りにせず、日付・事実・影響を記録に残しておくことです。「言った言わない」の水掛け論にせず、積み重ねた事実こそが、会社を守る土台になります。

そして、指導は一足飛びに厳しい処分へ向かわず、注意、指導記録、改善計画というように、段階を踏んで進めることです。手順を守ること自体が、最大のリスク対策になります。

最後に、判断に迷う場面ほど、その場で相手と法律論を戦わせないことです。「詳しいことは確認します」と一度持ち帰り、専門家の見解を得た上で、落ち着いて対応することが大切です。

法律という言葉は、時に本物の壁のように見えます。しかし多くの場合、経営者や管理職を止めているのは、法律そのものではなく、「知らないことへの恐怖」です。正しい手順さえ知っていれば、恐れる必要のない場面は、思いのほか多いものです。


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『会社を守るための決断』が、時に人を傷つけることに苦しんだ

「ありがとうございました」その一言が、一番こたえました

ある会社を営むSSさんは、長年苦楽を共にしてきた社員TTさんの処遇について、眠れない夜を何日も過ごしていました。

主要取引先の撤退により、会社の売上は大きく落ち込んでいました。この状況を乗り越えるには、組織のスリム化が避けられません。

候補として名前が挙がったのは、勤続15年、誰よりも会社に尽くしてきたTTさんでした。年齢的に、再就職も簡単ではないだろうことは、SSさんにも容易に想像がつきました。

「TTさんを切り捨てて、この会社を守る資格が、自分にあるのだろうか」

その問いは、答えの出ないまま、何度もSSさんの頭の中を巡りました。残る社員たちの雇用を守るためには、決断を先延ばしにできない。しかし、決断すれば、間違いなく一人の人生に深い影響を与えてしまう。どちらを選んでも、何かを裏切ることになる。そんな感覚に、SSさんは押しつぶされそうになっていました。

ついに決断の日、SSさんは、この話を人事担当者に任せることをしませんでした。自分の言葉で、直接TTさんに伝えると決めていました。事情を包み隠さず話し、退職金には規定以上の上乗せをし、再就職先の紹介にも、できる限り力を尽くすと約束しました。

TTさんは、しばらく沈黙した後、静かにこう言いました。

「長い間、お世話になりました。ありがとうございました」

その言葉は、SSさんの想像していたどんな反応よりも、深く胸に刺さりました。恨み言をぶつけられた方が、まだ楽だったかもしれません。誠実に受け止めてくれたことが、かえってSSさんに、自分の決断の重みを、まざまざと突きつけてきたのです。

その夜、SSさんは初めて、経営者仲間にこの胸の内を打ち明けました。「正しい決断だったはずなのに、少しも楽になれない」と。返ってきたのは、こんな言葉でした。

「楽になる必要は、ないんじゃないですか。苦しさを抱えたまま、次の決断にも向き合えることの方が、よほど大事だと思います」

対策として押さえておきたい点は、次の通りです。

まず、決断の必要性と、本人の価値を切り離して考えることです。会社を守るための決断であっても、それは相手の存在や努力を否定するものではありません。ここを混同すると、罪悪感だけが際限なく膨らんでいきます。

次に、避けられない決断であるほど、伝え方に最大限の誠意を尽くすことです。人任せにせず、自分の言葉で伝え、できる限りの支援を用意する。この過程を丁寧に踏むことが、本人の尊厳を守り、自分自身の心の整理にもつながります。

そして、苦しさを一人で抱え込まないことです。経営者は孤独になりやすい立場ですが、信頼できる相手に胸の内を話すことで、判断力を保ち続けることができます。

最後に、痛みを感じなくなることを目指さないことです。決断に伴う苦しさを感じ続けられることは、経営者として鈍くなっていない証でもあります。むしろ、その痛みを避けようとして必要な決断を先送りにすることの方が、結果的に、より多くの人を傷つけることになりかねません。

会社を守る決断が、人を傷つけることは、時に避けられません。問われているのは、傷つけないで済む方法ではなく、傷つけてしまった重みを、どう引き受け続けるか、その姿勢だと思います。


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「なぜこれをやるのか」を説明しないと若手が動いてくれなかった

「なぜですか?」その一言に、苛立った日

ある会社で、ベテラン課長のQQさんは、長年ずっと同じやり方で部下に指示を出してきました。「いいから、これをやっておいて」――理由を説明せずとも、部下たちは黙って動いてくれるものだと、当たり前のように思っていました。

新入社員のRRさんが配属されてきたある日、QQさんはいつも通り、簡潔に指示を出しました。「この資料、この形式でまとめておいて」

すると、RRさんは静かに尋ねました。

「あの、これは何のために、この形式でまとめるんでしょうか

QQさんの中に、小さな苛立ちが生まれました。「いいから、言われた通りにやればいいんだ」。その一言を飲み込みながらも、表情には出てしまっていたかもしれません。RRさんはそれ以上聞くのをやめ、黙って作業を始めました。

しかし、出来上がった資料は、QQさんが本当に必要としていたものとは、微妙にずれていました。

RRさんは「言われた通り」にはやっていましたが、目的を理解しないまま作業していたため、判断が必要な細部で、的外れな選択をしていたのです。

QQさんはやり直しを命じながら、内心でこう思っていました。「最近の若手は、指示待ちで応用が利かない」と。

ある日、QQさんは、ふと考え直してみました。RRさんが最初に発した「なぜですか」という問いは、本当に反抗や甘えだったのだろうか、と。むしろあれは、目的を理解した上で、良い仕事をしたいという意思表示だったのではないか。

QQさんは、次の指示から、伝え方を変えてみることにしました。「これをやっておいて」ではなく、「この資料は、来週の役員会議で使う数字の根拠が伝わることが大事だから、この形式でまとめてほしい」と、先に目的を添えて伝えたのです。

結果は、明らかに違っていました。RRさんは、目的を理解した上で、指示された範囲を超えて、分かりやすい補足資料まで自主的に用意してきました。QQさんは、驚きながらも、腑に落ちるものを感じていました。

対策として押さえるべき点は、次の通りです。

まず、「なぜですか」という問いを、反抗や甘えだと決めつけないことです。多くの場合、それは仕事の意味を理解し、良い成果を出したいという、前向きな意思の表れです。

次に、聞かれてから説明するのではなく、指示を出す時点で、目的や背景を先に伝えることです。順序を変えるだけで、同じ説明が「言い訳」ではなく「共有」として受け取られるようになります。

そして、指示には「何をするか」だけでなく、「なぜそれが必要か」と「どんな状態を目指すか」までを添えることを、習慣にすることです。

さらに、目的を理解して動く部下は、指示の範囲を超えた工夫や提案をするようになることを、実感として知っておくことです。説明にかける時間は、後の成果の質で十分に回収されます。

最後に、これは特定の世代の性質ではなく、情報や理由づけを重視して育った世代に合わせた、必要なマネジメントの更新だと捉えることです。

言われた通りにやる部下」と、「目的から逆算して必要な行動を自ら考えて動く部下」を分けるものは、本人の資質ではなく、最初にどれだけの理由が渡されたか、その一点にあります。


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管理職自身が「怒鳴ってしまった」と後で後悔していた

「大声を出してしまった」その日の帰り道

ある会社で、課長のOOさんは、繁忙期の対応と重なる締め切りに追われていました。

そんな中、部下のPPさんが、確認すれば防げたはずのミスを起こしてしまいます。取引先への謝罪対応を終えた直後、張り詰めていた緊張の糸が切れました。

「何度言えば分かるんだ!」

自分でも驚くほどの大声がオフィス中に響きました。

一瞬にして職場は静まり返り、PPさんは顔をこわばらせたまま俯いてしまいました。周囲の社員も気まずそうに視線をそらします。

その日の帰り道、OOさんの頭を占めていたのは、怒りではなく後悔でした。

「指摘した内容は間違っていなかった。しかし、あの伝え方は完全に間違っていた。」

そう考えるたびに胸が痛みました。


翌朝、OOさんはPPさんを別室に呼びました。

「昨日は大声を出してしまって、本当に申し訳なかった。ミスは指摘しなければならなかったと思う。でも、あの伝え方は間違っていた。」

PPさんは驚いた表情を浮かべましたが、次第に表情が和らいでいきました。

その姿を見て、OOさんはもう一つ、大切なことに気づきました。

自分は、PPさんが嫌いだから怒鳴ったのではなかった。

むしろ逆でした。

さらに振り返ると、原因はPPさんのミスだけではありませんでした。

連日の残業、終わらない業務、取引先への対応……。

心にも時間にも余裕がなくなっていたことが、最後の一押しになっていたのです。

そこでOOさんは考えました。

「期待を持つこと」と「怒鳴ること」は、まったく別のことではないか。

相手に成長してほしいという思いは大切です。

しかし、
その思いが怒鳴るという形で伝わってしまえば、
相手に届くのは期待ではなく恐怖です。

恐怖では、人は一時的に動くことはあっても、自ら考え、成長する力は育ちません。

それ以来、OOさんは、自分が感情的になりそうなときほど、一度立ち止まるようになりました。

「今、自分は怒っているのか。それとも期待しているのか。」

そう自分に問いかけるだけで、言葉の選び方は大きく変わるようになりました。


この事例から学べること

① 怒鳴る原因は、怒りだけではありません

管理職が怒鳴ってしまう背景には、

「成長してほしい」
「成功してほしい」
「失敗してほしくない」

という期待責任感が隠れていることが少なくありません。

だからこそ、「怒鳴ってしまう自分は最低だ」と責めるだけでは、根本的な解決にはなりません。

「期待」と「伝え方」は分けて考えることが大切です

期待することは悪いことではありません。

問題なのは、その期待が感情となって噴き出し、怒鳴るという形で表現されてしまうことです。

相手に届けたいのは期待であり、恐怖ではありません

③ 怒鳴りそうなときは、自分の状態を確認する

怒鳴る直前は、相手だけでなく、自分自身も限界に近づいていることが少なくありません。

[「疲れていないか。」
「焦っていないか。」
「余裕を失っていないか。」

まず自分の状態に気づくことが、感情をコントロールする第一歩になります。

④ 怒鳴ってしまったら、できるだけ早く向き合う

もし感情的になってしまったら、時間を空けずに本人へ伝えましょう。

謝るべきことは、
ミスを指摘したことではなく、怒鳴ってしまったこと(伝え方)です。

その一言が、失われかけた信頼関係を取り戻すきっかけになることがあります。

⑤ 本当のリーダーシップは、怒鳴ることではなく導くことです

「どうでもいい相手なら怒鳴らない。」

確かに、その側面はあります。

しかし、本当に相手の成長を願うのであれば、怒鳴ることではなく、相手が前を向いて成長できるように導くことが大切です。

期待が大きい人ほど、言葉は強くなりがちです。

だからこそ、期待の大きさではなく、伝え方の質が、優れた管理職をつくるのです。


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注意した内容を録音され、「証拠がある」と言われた

ある会社を営むNNさんのもとで、店長のLLさんが、勤務態度に課題のある社員MMさんへ、業務改善の注意を行っていました。事実に基づいた、いつも通りの指導のつもりでした。

会話が終わりかけたその時、MMさんがぽつりと言いました。

「今の話、録音してますから。証拠がありますので」

LLさんの背筋に、冷たいものが走りました。何か問題のある発言をしてしまっただろうか。言葉を思い返しても、はっきりとは分か

りません。しかし「証拠がある」という響きだけが、頭の中に重く残り続けました。

それ以来、LLさんはMMさんへの指導を、極端に避けるようになっていきました。何を言っても、また録音され、都合よく切り取られて使われるかもしれない。その恐れが、必要な指摘さえも飲み込ませてしまったのです。

結果として、MMさんの業務態度は改善されないまま放置され、他のスタッフの間にも「MMさんだけ何も言われない」という不満が広がり始めました。LLさんは、萎縮したまま、何も変えられずにいました。

この状況を聞いたNNさんは、LLさんに一つの問いを投げかけました。

「録音されて、困る内容を話していましたか」

LLさんは、少し考えてから答えました。「いいえ。事実だけを、いつも通り伝えていたと思います」

NNさんは続けました。「それなら、録音されていること自体は、恐れる必要がありません。むしろ、正しく指導していたことの証明にもなります。

変えるべきは、指導をやめることではなく、いつ録音されても大丈夫な伝え方を徹底することです」

その言葉で、LLさんの中の恐怖は、少しずつ和らいでいきました。問題は「録音される」ことそのものではなく、「録音されたら困る内容を話してしまうかもしれない」という、自分自身への不安だったのです。

対策として押さえるべき点は、次の通りです。

まず、録音されることを恐れて、必要な指導そのものをやめないことです。指導を止めれば、問題は放置され、他の社員との不公平感だけが広がっていきます。

次に、指導の内容を、いつ誰が聞いても問題のない形に整えることです。感情的な言葉を避け、事実と業務上の影響だけを、落ち着いた口調で伝える。これができていれば、録音は脅威ではなく、むしろ適切な対応をしていた記録になります。

そして、重要な注意や指導の場面では、可能な限り第三者(人事担当者など)を同席させることです。密室での一対一を避けることで、「言った言わない」の水掛け論そのものを防げます。

さらに、口頭でのやり取りと合わせて、指導内容を書面やメモにも残しておくことです。録音がどう使われても、こちらの記録と食い違わなければ、恐れる材料にはなりません。

最後に、「証拠がある」という言葉に、即座に怯んだり謝罪したりしないことです。まずは何を話したかを冷静に振り返り、落ち着いて向き合う姿勢を崩さないことが大切です。

録音そのものは、敵にも味方にもなります。それを決めるのは、録音機の有無ではなく、その場でどんな指導をしていたか、その一点です。


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ハラスメント研修をしても、現場の空気は変わらなかった。

「研修は、やったはずなんですが」

ある製造業を営むKKさんは、数年前に社内で起きたハラスメントの訴えをきっかけに、全管理職を対象とした研修を導入しました。

外部講師を招き、丸一日かけて行った本格的な内容でした。研修後のアンケートには「勉強になった」という声が並び、KKさんは、これでようやく職場の空気が変わるだろうと、安堵していました。

しかし半年後、状況はほとんど変わっていませんでした。

ある管理職は、相変わらず部下を人前で強い口調で叱責し続けていました。若手社員たちは以前と同じように、萎縮したまま声を上げられずにいました。

匿名アンケートを実施したところ、「相談窓口はあるが、使えば報復されそうで怖い」という回答が、複数寄せられていたのです。

KKさんは、深く困惑しました。「研修は、やったはずなんです。なぜ、何も変わらないのでしょうか」

答えは、思いのほか単純なところにありました。研修は、知識を伝える場ではあっても、行動そのものを変える場ではなかったのです。

受講した管理職たちは、ハラスメントの定義や事例を「知識として」学びはしましたが、自分自身の日々の振る舞いを、その知識と結びつけて振り返る機会までは、与えられていませんでした。

さらに、KKさんは、ある事実にも気づかされました。相変わらず高圧的な態度を取り続けていたその管理職は、同時に社内で最も業績を上げている人物でもあったのです。研修で「変わってほしい」と伝えながら、評価や処遇では、これまでと同じ基準で厚遇し続けていました。社員たちは、その矛盾を敏感に見抜いていたのです。「結局、数字さえ出していれば、何も変わらないんだ」と。

研修という”言葉”と、評価という”行動”が食い違っている限り、どれだけ立派な研修を重ねても、現場は本気にしません。

対策として押さえるべき点は、次の通りです。

まず、研修を一度きりの行事として扱わないことです。知識は時間とともに薄れ、日常の行動に定着するには、繰り返しの機会が必要です。

次に、経営者や管理職自身が、率先して行動で示すことです。研修で語られた内容と、実際の評価や処遇が矛盾していれば、現場はその矛盾の方を本物のメッセージとして受け取ります。

そして、相談窓口が実際に信頼されているかを確かめることです。窓口が存在することと、安心して使われていることの間には、大きな隔たりがあります。匿名調査などを通じて、その信頼度を定期的に点検する必要があります。

さらに、成果を「研修の実施率」ではなく、「現場の実態の変化」で測ることです。受講者数や満足度アンケートは、変化の証拠にはなりません。

最後に、日常のマネジメントの中に、学んだ内容を組み込み続けることです。研修は入り口にすぎず、1on1や日々の指導の場でこそ、本当の定着が試されます。

研修は、変化のきっかけにはなりますが、変化そのものではありません。現場が本当に見ているのは、研修の内容ではなく、その後も変わらない、経営者自身の行動です。