勤務態度不良を理由とした普通解雇。有効性をめぐる争い。

「何度注意しても、まったく変わらない…」

建設会社を経営するAAさんは、一人の社員の対応に頭を抱えていました。

その社員は、遅刻や無断離席が目立ち、作業中に私用のスマートフォンを頻繁に操作するなど、勤務態度に問題がありました。

上司が何度注意しても、その場では「分かりました」と返事をするものの、数日もすると元通り。同僚からは、「真面目に働いている人が損をしている」と不満の声が上がり、現場全体の士気にも影響が出始めていました。

AAさんは、「これ以上放置すれば、会社の規律が保てない」と判断し、その社員に普通解雇を言い渡しました。

ところが数週間後、その社員は代理人を通じてこう主張してきたのです。

「勤務態度が悪いというだけで解雇するのは不当です。解雇は無効なので、未払い賃金を支払ってください。」

AAさんは驚きを隠せませんでした。

「何度も注意した。それでも改善しなかった。会社として当然の判断をしたはずなのに、なぜ解雇が問題になるのだろう。」

しかし、詳しく確認してみると、会社には大きな落とし穴がありました。

口頭で注意したことは何度もありましたが、その記録は残していませんでした。

改善指導の内容や日時、本人の反応を記録した書面もなく、始末書や注意書もありません。

さらに、就業規則には勤務態度不良に関する懲戒や指導の基準は定められていましたが、改善の機会をどのように与えるかについては具体的な運用がなされていませんでした。

つまり、「改善の機会を十分に与え、それでも改善されなかった」という事実を客観的に示す証拠が不足していたのです。

AAさんは、この経験から痛感しました。

勤務態度に問題があることと、直ちに解雇が認められることは、まったく別の問題だったのです。

解決のポイント

勤務態度不良を理由に普通解雇を検討する場合は、いきなり解雇を選択するのではなく、改善指導を積み重ねることが重要です。

注意や指導の内容を記録として残し、必要に応じて始末書や指導書を交付し、改善の機会を十分に与えたことを証拠として残します。

そのうえで、就業規則に基づき、注意・指導・懲戒と段階的な対応を経ても改善が見られない場合にはじめて、解雇の有効性を主張しやすくなります。

解雇の成否を左右するのは、経営者の不満ではありません。会社がどれだけ公平な手順を踏み、その経過を客観的な証拠として残していたかにかかっているのです。