仕事よりも自分の時間を優先する価値観との折り合い
関係づくり定時で帰る部下に、モヤモヤしてしまう理由 ① 経営者の悩み 「今日、この件だけ片付けてから帰ってもらえると助かるんだけど…」 そう伝えたある経営者に返ってきたのは、「すみません、今日は予定があるので明日でもいいですか」という一言でした。 責めるつもりはない。有給も残業も、ルール上は何の問題もありません。それでも、心のどこかにモヤモヤが残ります。 自分が若手の頃は、多少の無理をしてでも仕事を優先するのが当たり前だと思っていました。今の部下たちは、定時になればきっちり帰り、休日の予定を仕事より優先します。 悪いことをしているわけではないと頭では分かっていても、「この温度差のままで、会社は大丈夫だろうか」という不安が拭えません。 多くの経営者様が、口には出さずとも同じ違和感を抱えていらっしゃいます。 ② なぜ起きるのか(心理・労務の視点) これは、単なる「今どきの若者」という世代論だけでは片づけられません。心理面と労務面、両方の変化が背景にあります。 心理的要因: 今の若い世代は、終身雇用が当たり前ではない環境で育ち、「会社に尽くせば報われる」という前提そのものを信じにくい社会を経験してきました。仕事に人生の比重を大きく置くこと自体に、リスクを感じている面があります。 これは怠けではなく、変化した社会構造への合理的な適応とも言えます。 労務・仕組み的要因: 近年の働き方改革や36協定の運用強化により、残業や休日出勤への規制は年々厳しくなっています。会社としても、法令順守の観点から「定時で帰ることを推奨する」立場を取らざるを得ません。 つまり、部下の「自分の時間を優先する」姿勢は、会社自身が整えてきた仕組みの結果でもあるのです。 つまりこの問題は、社会構造の変化に伴う心理と、会社が守るべき労務上のルールが重なった結果として起きています。頭ごなしに否定できる話ではないのです。 ③ 今日からできる対策 価値観を変えさせようとするのではなく、噛み合わせ方を工夫することが現実的です。 「限られた時間でどう成果を出すか」を一緒に設計する 「もっと頑張れ」ではなく、「決められた時間の中でこの成果を出すには、何を減らせばいいか」を一緒に考える機会を作ってみてください。時間を守りたい価値観と、成果を出したい会社の要望を、対立ではなく共同作業として扱えます。 「緊急時だけは協力してほしい」を先に合意しておく 普段は時間を尊重する代わりに、繁忙期やトラブル時にはスポットで協力してほしい、という線引きをあらかじめ言葉にしておきましょう。事前の合意があれば、いざという時のお願いが「裏切り」ではなく「約束の範囲内」として受け止められやすくなります。 ハードルは低くて構いません。まずはここから始めてみましょう。 ④ 社労士としての一言 「自分の時間を優先する」姿勢に戸惑うお気持ち、とてもよく分かります。 ただ、これは部下の忠誠心が足りないという話ではなく、時代とともに会社と個人の関係性そのものが変わってきた結果だと、私は捉えています。 仕組み(時間の使い方の合意)を整えれば、価値観の違いがあっても、お互いに納得できる働き方は必ず作れます。一人で抱え込まず、いつでもお気軽にご相談くださいね。 続きを読む