カテゴリー別アーカイブ: 関係づくり

従業員との関わり方

今日は、仲間が生きたかった明日

その他

夏が終わった。 あれほど騒がしかった森から、いつの間にか声が消えていた。 一匹、また一匹と仲間はいなくなり、気がつけば、木にしがみついているのは自分だけだった。 秋が過ぎ、冷たい風が吹くようになった。 そして、雪が降った。 セミが生きる季節ではない。 羽には雪が積もり、足は凍える。もう鳴いても、返事をする仲間はいない。 それでも、一匹のセミは木から離れなかった。 誰かに褒めてもらうためでもない。誰かに見てもらうためでもない。 ただ、残された命を使い切るように、今日を生きていた。 若い頃、年を取ることは「足し算」だと思っていた。 できることが増える。知っていることが増える。仲間が増える。夢が増える。 けれど、あるところから人生は、少しずつ引き算になっていく。 若さを失う。体力を失う。できたことが、できなくなる。 そして何より―― 昨日まで隣にいた仲間を今日は見ることができなくなった。 しかし失い続けても『絶望』ではなく『感謝』がやってきた。 あの人が迎えたかった朝を、私は迎えている。 あの人がもう一度見たかった空を、私は見ている。 あの人が生きたかった一日を、私は今日、生きている。 残ったものの価値は、むしろ大きくなっていくのだ。 あとどれだけ時間があるのかなど、誰にも分らない。 でも歩き続けよう。 誰かの役に立てるなら。 春を見られるかなど、分からない。 でも、それでいい。 自分に与えられた命を使い切る。 なぜなら―― 今日は、仲間が生きたかった明日だから。 それが、先に逝った仲間から託された「今日」を生きることだと思うから。 続きを読む

映画キングダム。国境を撤廃すると平和になるのか?

その他

映画キングダム 若き秦王である嬴政(えいせい)が 「この世から戦争を無くすために、国境を無くして統一国家を作る」 と言っています。 確かに国がなくなるわけですから 「国という単位」では争いは起きなくなるのでしょう。 しかし、これで本当に平和が来るのでしょうか? 実際のところ、国境がなくなれば「価値観が全く違う人」が入ってきます。 しかし、日本人のように「和を重んじる人達」だけではありません。 実際、強制的に「道徳観念のない人」と共同生活をさせられたら、 あなたは我慢できますか? 例えば 日本人は八百万の神といって 森羅万象すべてに神を見出し、調和を大切にしますが、 「一神教で、しかもそれ以外は破壊する」という文化の人もいます。 自分達が大切にする神々を否定されたら 「和を重んじる」といっていられますか? そこで政府が「争い」を生まないように 日本人に対して 「古い正義・道徳・倫理(伝統的価値観)を手放そう」 「多様性を認めよう」 「ヘイトはよくない」 と訴える。 するとあなたはどう感じるでしょうか? もたらされる未来は 法の厳格化。 監視社会。 言論封鎖。 この末路は映画キングダムのモデルとなった 「秦国」の歴史も証明しています。 わずかなルール違反でも、死刑や肉刑。(法の厳格化) 人々を小さなグループに分け、お互いを監視させ(監視社会) 政治を批判することを徹底的に禁じ、 実用書以外の思想書や歴史書を燃やし 政治を批判した人を460人以上生埋めにしました。(言論封鎖) グローバリズムを掲げる人達は 「伝統的価値観」を否定し、 「国境」をなくし、 「主権国家」を弱体化させ、 世界を一元管理しようとしていると言われます。 しかし、国境をなくしても平和は訪れません。 争いのない社会を作るために必要なのは むしろ「教育」「魂の成長」ではないでしょうか。 その点、 全部ではありませんが 日本はよいモデルになれる。 そうは思いませんか? 続きを読む

従業員が辞めて潰れる会社が過去最多ペース。

専門情報

「彼が辞めたら、売上まで消えた」 ある中小企業には、社長が絶大な信頼を寄せる営業社員がいました。 営業力が高く、顧客からの信頼も厚い。大口顧客の多くを一人で担当し、新規案件も次々と取ってくる。 社長も、 「彼がいれば、うちは大丈夫だ」 と思っていました。 ところがある日、その社員から突然、 「社長、お話があります。退職させてください」 と告げられます。 社長にとっては青天の霹靂でした。 慌てて引き留めましたが、本人の意思は固く、数か月後に退職。 問題は、その後でした。 売上が落ち始めたのです。 後任者をつけても、顧客との関係性が分からない。営業の進め方も分からない。見積りの勘所も、顧客ごとの注意点も、その社員の頭の中にしかありません。 さらに、 「○○さんがいなくなったのなら……」 と取引を縮小する顧客まで現れました。 そこで社長は、初めて気づきます。 「会社に売上がついていたのではない。彼についていたんだ」 優秀な社員は「辞めないようにする」だけでは守れない もちろん、優秀な社員が長く働きたいと思える会社をつくることは大切です。 しかし、 「この人だけは辞めないだろう」 を経営の前提にするのは危険です。 独立するかもしれない。もっと条件のよい会社へ転職するかもしれない。家庭の事情で退職するかもしれない。病気や事故で突然働けなくなることもあります。 つまり経営者が考えるべきなのは、 「どうすれば優秀な社員を辞めさせないか」だけではなく、「優秀な社員が辞めても売上が崩れない会社をどうつくるか」 という問題です。 解決のヒント 一度、社内でこんな質問をしてみてください。 「明日、最も優秀な社員が突然いなくなったら、何が止まるだろう?」 顧客との関係。営業ノウハウ。見積り。技術。仕入先との交渉。クレーム対応。重要な判断。 一人が抜けただけで止まるものが多いほど、その会社は「人に依存した経営」になっています。 そこで必要なのが、 属人化 → 共有化 → 標準化 → 仕組み化 です。 優秀な社員の仕事を単純なマニュアルにするだけではありません。 「なぜこの顧客にはこの提案をするのか」「何を見て優先順位を決めているのか」「トラブルの兆候をどう見抜いているのか」 といった、優秀な人の頭の中にある判断基準まで会社の財産に変えていくことが重要です。 そして、顧客との関係も、 「○○さんのお客様」から「会社のお客様」へ。 担当者だけでなく複数の社員が顧客と接点を持ち、情報を共有し、誰かが抜けても引き継げる状態をつくります。 「優秀な社員が辞める会社」が弱いのではない 社員が辞めること自体をゼロにすることはできません。 本当に怖いのは、 一人辞めただけで、売上まで一緒に辞めてしまう会社です。 優秀な社員を大切にする。 同時に、その人がいつか会社を離れることも経営上の前提にする。 これは社員を信用しないという話ではありません。 むしろ、 「人を大切にする経営」と「人に依存しない経営」を両立させる。 そこまでできて初めて、優秀な人材が入れ替わっても成長を続けられる、強い会社になるのではないでしょうか。 続きを読む

「日本人は空気を読みすぎだ」と批判する外国人従業員

専門情報

「日本人って、空気を読みすぎだと思うんですよ」 「日本人って、空気を読みすぎだと思うんですよ」 会議の途中、若手社員のAさんがそう言いました。 「言いたいことがあっても言わない。周りに合わせる。そんなの息苦しいじゃないですか。もっと自分の考えを自由に言った方がいいと思います」 社長も、その意見には一理あると思いました。 確かに、上司の顔色ばかり見て誰も反対意見を言わない会社では、問題があっても表に出ません。 「こんなことを言ったら嫌われる」「みんな黙っているから、自分も黙っていよう」 そんな「空気を読む文化」が強すぎれば、組織は間違った方向へ進むことがあります。 ところが、Aさんの言う「空気を読まない」は、少し違っていました。 忙しい時間帯でも、自分の仕事が終われば周囲を手伝わない。 同僚が困っていても、 「それ、私の仕事じゃないですよね」 終業時刻が近づけば、引き継ぎもせず帰る準備を始める。 会議でも、 「私はそう思いません」 と自分の意見は強く主張する一方で、他人の事情や立場にはあまり関心を示しません。 空気を読むのをやめる=「身勝手」に生きる? ある日、社長はAさんに尋ねました。 「空気を読まないことと、他人への配慮をしないことは、同じなのかな?」 Aさんは黙りました。 社長は続けます。 「例えば、誰も空気を読まない社会を想像してみようか」 列に並んでいても、「自分は急いでいるから」と割り込む。 ごみ箱が遠ければ、「自分が困らなければいい」とその場に捨てる。 公共の場所でも、「自分の自由だから」と周囲への迷惑を考えない。 会社でも、「勤務時間は終わったから」と、緊急対応中の仲間に何も告げず帰る。 もちろん、これらは「空気を読まない」というより、ルール違反や他者への配慮の欠如です。 しかし、社長が伝えたかったのはそこでした。 「空気を読まない」という言葉の中に、「他人のことを考えなくていい」まで混ぜてはいけない。 「空気を読む」は本当に悪いことなのか 空気を読むとは、本来、 「自分以外の人間が何を考え、何を必要としているのかを想像する力」でもあります。 相手の表情を見る。 困っている人に気づく。 自分の行動が周囲にどんな影響を与えるか考える。 言わなくても助け合う。 自分だけ得をする行動を控える。 こうした行動まで捨ててしまったら、組織はどうなるでしょうか。 問題なのは、「空気を読むこと」ではありません。 「空気に支配されること」です。 ここは分けて考える必要があります。 「空気を読む集団」と「読まない集団」 二つの会社があったとします。 A)「自分だけ得をすればいい」ではなく、 「自分も少し譲る。その代わり相手も少し譲る」という行動を社員がお互いに取る。 B)「他人がどうするかは関係ない。自分にとって一番得な行動をする」という人ばかり。 短期的には、後者の方が得をする人が出てくるかもしれません。 しかし、それが全員の行動原理になったらどうでしょう。 誰も助けない。 情報を共有しない。 面倒な仕事を押し付け合う。 自分の失敗を隠す。 他人の失敗を利用する。 やがて全員が、 「自分だけ協力したら損をする」と考え始めます。 結果として、組織全体が弱くなっていきます。 ここには「囚人のジレンマ」と似た構造があります。 個人にとって合理的に見える「自分だけ得をする」という選択が、皆に広がると、結果的に全員にとって悪い状態をつくってしまうのです。(誰もが自分の利益を優先する▶「誰も得をしない」状況を作り出す。) 逆に、長期的な関係では、 「自分も協力する。相手も協力する」という相互協力が成立すれば、 一人では生み出せない大きな利益をつくることができます。 会社も同じです。 強い組織とは、全員が空気に従う組織でも、 全員が好き勝手に行動する組織でもありません。 「日本人は空気を読みすぎだ」という批判から本当に考えるべきこと この社員に「もっと空気を読め」と指導するだけでは、 本質的な解決にはならないでしょう。 会社として教えたいのは、次の違いです。 ◎「自分の意見を持つこと」と「自分勝手に行動すること」は違う。 目指すのは、「同調」ではなく「協調」。 「空気を読む」とは、 「みんながそう言っているから間違っていることでも従う」ではありません。 自分の考えを持ちながら、他人のことも考える。 自分の利益を守りながら、仲間の利益も考える。 必要なときには周囲と違う意見を言い、それでも組織の一員として協力する。 それは「自分を殺して周囲に合わせること」とは違います。 むしろ、「自分も大切にする。他人も大切にする」という、より高度な協調です。 そして長期的に見れば、そうした人が集まった組織の方が、「自分だけ得をすればいい」という人が集まった組織より強くなる。 「日本人は空気を読みすぎだ」という批判から本当に考えるべきなのは、 「空気を読むことの是非」ではなく、「自分と他人の利益を、どう両立させるか」なのかもしれません。 続きを読む

人の心は縛れない⁉

関係づくり

人の心は縛れない⁉男女の関係も、会社と従業員の関係も。 人の心を縛ることはできません。 それは、男女の関係でも、会社と従業員の関係でも同じです。 「ずっと好きでいてくれる」 「絶対に裏切らない」 「この会社を辞めない」 「会社のために頑張り続ける」 そんな未来を、誰かに100%保証してもらうことはできません。 だから、人は不安になります。 しかし、ここでもう一つ考えてみたいことがあります。 私たちは、本当に「相手」を信じられないのでしょうか。 それとも、 本当は「自分」を信じられないのでしょうか。 「この人が、ずっと私を愛してくれるはずがない」 ある夫婦がいました。 妻は夫を愛していました。 ところが夫は、ある頃から不安を感じるようになります。 「最近、以前より話してくれなくなった」 「スマートフォンをよく見ている」 「本当に自分を愛しているのだろうか」 妻は何度も言います。 「大丈夫だよ」 「あなたのことを大切に思っているよ」 その瞬間は安心します。 ところが、しばらくすると、また不安になります。 なぜでしょう。 もしかすると問題は、 妻の愛情の大きさだけではなかったのかもしれません。 心の奥に、 「自分なんて大した人間ではない」 「自分より魅力的な人はいくらでもいる」 「こんな自分を、ずっと愛してくれるはずがない」 という思いがあったとしたらどうでしょう。 相手がどれだけ、 「愛している」 と言ってくれても、 自分自身が、 「自分は愛されるに値する人間だ」 と思えなければ、その愛情を受け取ることが難しくなることがあります。 そして、 「いつか捨てられるのではないか」 という不安から、 「どこにいたの?」 「誰といたの?」 「スマホを見せて」 と確認するようになります。 最初は確認だったものが、やがて監視になります。 妻は息苦しくなり、夫と話すことを避けるようになる。 すると夫は、 「やっぱり何か隠している。」 と思います。 さらに疑う。 さらに監視する。 妻はさらに離れていく。 そして最後には、本当に二人の関係が壊れてしまいます。 恐れていた未来を、 自分自身の不安によって引き寄せてしまったのです。 会社でも同じことが起こります ある会社に、非常に優秀な従業員がいました。 社長はその社員を高く評価し、大切な仕事を任せていました。 ところが社長は、ある日ふと思います。 「こんな優秀な人間が、いつまでうちにいてくれるだろう」 「あの会社なら、もっと給料を出せる」 「その気になれば独立だってできる」 「いずれ辞めるのではないか」 これは社員への不信でしょうか。 もちろん、それもあるでしょう。 しかし、その奥には別の問題が隠れている場合があります。 「自分の会社には、優秀な人が残ってくれるだけの価値があるのだろうか」 という、会社自身への自信のなさです。 すると経営者は不安になります。 報告を増やす。 権限を減らす。 重要な情報から外す。 他の社員との会話まで気にする。 「辞めるつもりじゃないよな?」 と何度も確認する。 社員からすれば、 「あれだけ信頼してくれていた社長が、自分を疑い始めた」 ということになります。 やがて社員は本音を話さなくなる。 すると社長は、 「やっぱり最近、何かおかしい。」 と思います。 さらに管理する。 社員はさらに心を閉ざす。 そして、ある日。 社員が退職届を持ってきます。 社長は言います。 「やっぱり辞めるつもりだったんじゃないか。」 しかし、本当にそうだったのでしょうか。 もしかすると、 「辞めるかもしれない」と恐れ続けた経営者の行動そのものが、社員を辞めさせる一因になったのかもしれません。 信頼関係の問題には、三つの「信」がある ここまで考えると、信頼関係には三つの層があることが分かります。 ① 相手を信じる 「あの人なら大丈夫」 「この社員なら任せられる」 これは一般的にいう「信頼」です。 しかし、それだけでは不十分なことがあります。 ② 自分を信じる 「私は愛される価値のある人間だ」 「仮に何かが変わっても、自分は大丈夫だ」 会社なら、 「この会社には、人が働き続けたいと思える価値がある」 「問題が起きても、私たちは話し合い、改善していける」 という自己信頼です。 ③ 関係を信じる さらに大切なのが、 「何かあっても、この人とは話し合える」 という信頼です。 相手の気持ちが永遠に変わらないことを保証するのではありません。 変化があったときに、 隠すのではなく話せる。 疑うのではなく聞ける。 意見が違っても対話できる。 問題が起きても修復できる。 そうした関係そのものへの信頼です。 「永遠に変わらないこと」を求めるほど苦しくなる そもそも、人の心は変化します。 男女の気持ちも変わるかもしれません。 従業員の人生も変わります。 会社の状況も変わります。 だから、 「絶対に変わらないでほしい」 という安心を相手に求め続けると、苦しくなります。 安心とは、 「相手が永遠に変わらないこと」 だけから生まれるものではありません。 むしろ、 「何かが変わったとしても、自分は向き合える」 という自分への信頼からも生まれます。 だから、人の心を縛らない 会社は、労働契約によって従業員の行動について一定の約束をすることはできます。 しかし、 心まで契約することはできません。 会社への愛着も、 上司への信頼も、 仕事への情熱も、 命令によって生まれるものではありません。 男女の愛も同じでしょう。 「私を愛し続けなさい」 と言われて愛情が深くなるわけではありません。 だから、 人の心を縛ろうとするのではなく、相手が自分の意思で「ここにいたい」と思える関係をつくる。 それしかないのだと思います。 解決のヒント 信頼関係が不安になったとき、 すぐに相手を疑うのではなく、一度自分にも問いかけてみます。 「私は、何を怖がっているのだろう。」 裏切られることなのか。 捨てられることなのか。 社員が辞めることなのか。 自分に価値がないと証明されてしまうことなのか。 そこが分かれば、 「相手を縛る」という解決方法以外の選択肢が見えてきます。 話す。 聞く。 改善する。 感謝を伝える。 必要なルールは、人を疑うためではなく仕組みとして整える。 そして、自分自身や自分の会社も成長させていく。 人の心は縛れない だから必要なのは、 「絶対に裏切らない人」を手に入れることではありません。 相手を信じること。 自分を信じること。 そして、 何かが変わったときにも話し合える関係を信じること。 男女でも、 会社と従業員でも、 信頼とは、 「この人は永遠に変わらない」と信じ込むことではなく、変化する可能性まで含めて、それでも相手と向き合おうとすること なのかもしれません。 人の心は縛れない。だから、縛らなくても続く関係をつくる。 そのためには、相手への信頼だけではなく、 自分自身への信頼も必要なのです。 続きを読む

関係づくり

「それ、違いますよ」 ある会社で、納品をめぐるトラブルが起きました。 担当者のAさんが言います。 「先方から聞いていた納期は金曜日です。だから、このスケジュールで進めました」 すると上司は、強い口調で言いました。 「そんなはずないだろ。水曜日って言ってたじゃないか」 Aさんは説明します。 「いえ、途中で先方から変更のメールが来ています。私からもその内容を報告しています」 ところが上司は確認しません。 「また人のせいにするのか?」 「だから君は信用できないんだよ」 Aさんは困って言いました。 「メールを見てもらえませんか。過去のチャットにも残っています」 しかし上司は、 「そんなものを見なくても分かる」 と言って取り合いません。 そして最後には、 「言い訳ばかりする君の姿勢が問題なんだ」 とAさんを批判しました。 ところが、事実は数分で確認できた その場にいた別の社員が、念のため過去のメールを確認しました。 そこには明確に、 「納期を金曜日へ変更してください」 という取引先からの連絡が残っていました。 さらに社内チャットを確認すると、Aさんはその日のうちに上司へ報告していました。 つまり、 少し調べれば、すぐに分かることだったのです。 問題は、上司が間違えたことではありません。 人間ですから、記憶違いは誰にでもあります。 本当の問題は、 確認できる証拠があるのに確認しなかったこと。 そして、 相手の説明を聞かないまま、自分の記憶を「事実」として相手を批判したことでした。 なぜ、このタイプの問題は厄介なのか 意見が違うだけなら、話し合うことができます。 しかし、 「自分が正しい」という結論を先に決め、その結論に合わない情報を受け入れない となると、話し合いそのものが成立しにくくなります。 「メールを確認してください」と言われても、 「見る必要はない」「あなたが言い訳しているだけだ」となってしまう。 すると、いつの間にか、 「何が事実だったのか」という問題が、「どちらの人間性に問題があるのか」という争いに変わってしまいます。 さらに怖いのは、間違った人が「自信満々」に見えること 声が大きい。 言い切る。 相手の説明を遮る。 「絶対そうだった」と断言する。 こうした態度は、一見すると自信があるように見えます。 しかし、 自信の強さと、事実の正しさは別です。 会社で重要なのは、 「誰が強く主張したか」ではありません。 「何が確認できたか」です。 解決のヒント① 「記憶」と「事実」を分ける こんなとき、「あなたが間違っています」と正面からぶつかると、 さらに感情的になることがあります。 そこで、 「どちらが正しいかを争う前に、記録を確認しましょう」と事実確認へ戻します。 メール。 チャット。 日報。 勤怠記録。 契約書。 議事録。 防犯カメラ。 業務システムの履歴。 確認できるものがあるなら、 人の記憶より記録を優先する。 これを会社の共通ルールにします。 解決のヒント② 相手の説明を一度最後まで聞く 「それは違う」と思っても、すぐに遮らない。 まず、 「あなたは、どういう事実を根拠にそう考えているのですか?」と聞きます。 相手の説明を聞いたからといって、 相手の主張を認めたことにはなりません。 「聞くこと」と「同意すること」は別です。 相手の話を聞いたうえで証拠を確認し、会社として判断すればよいのです。 解決のヒント③ 間違ったことより「訂正できないこと」を問題にする 誰でも判断を間違えることはあります。 優秀な人でも記憶違いをします。 だから会社として本当に大切なのは、 「間違えない人」をつくることではありません。 事実が判明したとき、 「そうだったのか。私の認識が違っていた」 と修正できる人を増やすことです。 反対に、 証拠を示されても、 「でも、そもそも君の態度が悪い」などと論点を変え、 自分の誤りを認めない状態が続けば、組織では別の問題になります。 解決のヒント④ 管理職ほど「事実確認」を習慣にする 特に怖いのは、このタイプの判断をする人が管理職だった場合です。 評価。 注意指導。 懲戒。 配置転換。 ハラスメント相談。 従業員間のトラブル。 こうした場面で、 「俺には分かる」「以前からそういう奴だった」「どうせ言い訳だろう」 という思い込みで判断すると、会社の判断そのものを誤らせます。 管理職に必要なのは、 人を見る目だけではなく、自分の判断が間違っている可能性を検証する力です。 会社に必要なのは「正しい人」ではなく「事実に戻れる人」 意見が対立することはあります。 記憶違いもあります。 勘違いもあります。 それ自体は、大きな問題ではありません。 危険なのは、 調べれば事実が分かるのに調べない。相手の説明を聞かない。自分の思い込みを事実として扱う。そして、間違っている相手を批判する。 という状態です。 強い組織とは、 「誰が正しいか」を争い続ける組織ではありません。 意見が対立したときに、 「では、事実を確認しましょう」 と全員が同じ場所へ戻れる組織です。 思い込みで人を裁く前に、記録を見る。 それだけで防げる職場トラブルは、意外に多いのではないでしょうか。 続きを読む

社長、大変です。○○さんが逮捕されたそうです

専門情報

月曜日の朝。 会社に一本の電話が入りました。 従業員のAさんが、休日に店舗で商品を盗んだとして警察に逮捕されたというのです。 社長は耳を疑いました。 Aさんは普段、特別問題のある社員ではありません。 遅刻もほとんどなく、仕事も普通にこなしていました。 しかし、「窃盗」「逮捕」という言葉を聞いた瞬間、社長の気持ちは決まりかけました。 「犯罪を犯した人間を会社に置いておけない。懲戒解雇だ」 ところが、担当者が尋ねます。 「社長、まだ本人から何も聞いていませんよね?」 「でも逮捕されたんだろ?」 「逮捕されたことと、犯罪が確定したことは同じでしょうか?」 社長は言葉に詰まりました。 さらに別の問題も出てきます。 「本人が出勤できない間はどうするんですか?」 「取引先に知られたら?」 「会社名が報道されたら?」 「本人が会社のお金や商品にも手をつけていなかったか確認しなくていいんですか?」 単純に、 「犯罪者だからクビ」 では済まない問題だったのです。 最初に分けて考えたい3つの問題 このようなケースでは、感情的に処分を決める前に、 ①刑事事件の問題②会社で働かせることの問題③懲戒処分の問題 を分けて整理する必要があります。 特に重要なのが、 「逮捕=有罪確定」ではない という点です。 逮捕されたという情報だけで、会社が直ちに「窃盗をした」と断定して懲戒解雇するのは慎重であるべきです。 まず、何が起きたのかを確認します。 会社が確認したところ…… 数日後、Aさん本人と連絡が取れました。 本人は窃盗したこと自体は認めています。 しかし、事件は完全な私生活上の出来事でした。 会社の商品を盗んだわけでもありません。 勤務時間中でもありません。 会社名を使って犯罪をしたわけでもありません。 ここで社長は再び悩みます。 「犯罪をしたのは事実だ。それでも会社は関係ないということになるのか?」 そう単純でもありません。 私生活上の犯罪であっても、内容や重大性、本人の職務、会社の信用への影響などによっては、企業秩序との関係が問題になる場合があります。 反対に、 私生活上の犯罪をしたというだけで、どんなケースでも懲戒解雇できるわけでもありません。 たとえば「仕事との関係」で意味が変わる 同じ窃盗でも、 一般の従業員が休日に起こした事件と、 会社のお金を管理する経理担当者 では、会社として考えるべき問題が違ってきます。 現金・商品・顧客の財産を扱う職種であれば、職務上必要な信用との関係も検討する必要があります。 さらに、 会社の商品を盗んでいた となれば、話は大きく変わります。 会社内の窃盗であれば、企業秩序に直接関係する問題だからです。 だから、 「窃盗=この処分」 と機械的に決めるのではなく、事実関係と職務との関連性を整理する必要があります。 まず「処分」より「事実確認」 会社が最初に行うべきことは、 「懲戒解雇通知書を作ること」ではありません。 まず確認します。 逮捕されたという情報は確かなのか 何をしたとされているのか 本人は事実を認めているのか 事件は勤務中か、完全な私生活上か 会社や取引先が被害を受けていないか 会社の信用に具体的な影響が出ているか 本人の仕事内容と犯罪との関連性はあるか 就業規則の懲戒事由はどうなっているか 過去の勤務態度や処分歴はどうか そして、可能な範囲で本人にも説明・弁明の機会を設けます。 会社の中も確認する 意外に重要なのがここです。 たとえば商品を扱う従業員が外部で窃盗事件を起こしたのであれば、 「会社でも同じことをしていないか」 というリスク管理上の確認は必要になるでしょう。 ただし、 「窃盗で捕まったのだから、会社でも絶対盗んでいる」 と決めつけるのは違います。 在庫差異や金銭管理など、必要な範囲で客観的な確認をします。 疑うことと、確認することは違います。 逮捕中の勤怠を曖昧にしない 本人が身柄を拘束されれば、当然出勤できないことがあります。 ここで、 「逮捕されたから自動的に無断欠勤」 「犯罪者だから当然無給」 などと即断するのではなく、 就業規則、欠勤・休職制度、本人との連絡状況などを確認して、勤怠上どのように扱うのかを整理します。 刑事事件と労務管理は、分けて考える必要があります。 懲戒解雇ありきにしない 最終的な処分を考える際には、 事件の重大性、会社との関連性、職務内容、会社の信用への影響、本人の説明、就業規則、過去の処分との均衡など を総合的に検討します。 戒告などで済むケースもあれば、重い懲戒処分が問題になるケースもあります。 事案によっては懲戒解雇まで検討すべき場合もあるでしょう。 重要なのは、 「犯罪をしたから懲戒解雇」ではなく、「なぜこの事案では、この処分が相当なのか」を会社が説明できることです。 社長が一番やってはいけないこと 事件を知った直後、 「犯罪者を雇っておけるか。今日付けでクビだ!」 と処分してしまうことです。 後から事実関係が違っていた。 不起訴になった。 就業規則に想定した懲戒事由がなかった。 私生活上の行為と会社との関係を十分検討していなかった。 本人の話を一度も聞いていなかった。 そうなれば、 従業員の犯罪問題とは別に、会社自身が「解雇の有効性」という新しい紛争を抱えることになります。 この事例から考えたいこと 従業員が逮捕された。 経営者が動揺するのは当然です。 しかし、重大な問題が起きたときほど、 事実確認 → 会社・職務との関連性 → 本人の説明 → 就業規則 → 処分の相当性 という順番が重要になります。 「悪いことをしたのだからクビ」という感情と、「会社としてどのような処分ができるのか」という労務管理上の判断は、同じではありません。 問題社員対応で会社を守るのは、厳しい処分そのものではありません。 重大な問題が起きても、正しい手順で判断できる会社であること。 それが最終的に会社を守ります。 続きを読む

従業員に不満を言われないために制度を増やし続けた結末

専門情報

ある会社の社長は、従業員を大切にしたいと本気で考えていました。 「せっかく働いてくれるのだから、できるだけ良い会社にしたい」 残業を減らしました。 休暇も取りやすくしました。 福利厚生も少しずつ充実させました。 すると、別の要望が出てきました。 「住宅手当はないんですか?」 対応すると、今度は、 「昼食補助がある会社もありますよ」 さらに、 「年間休日がもっと多い会社もあります」 「在宅勤務はできないんですか?」 「有給休暇とは別に特別休暇がほしいです」 社長はできる限り応えていきました。 ところが―― 従業員から不満がなくなることはありませんでした。 ある日、こんな声まで聞こえてきます。 「これだけ働いて、この給料じゃ安いよね」 社長は愕然としました。 「残業も減らした。休みも増やした。福利厚生も増やした。それでもダメなのか?」 そして、いつしか会社の会議では、 「会社として何をすべきか」ではなく、「社員から文句を言われないために何をするか」 が基準になっていました。 「ブラック企業」という言葉が一人歩きしていないか もちろん、法律を守らない。 長時間労働を放置する。 残業代を払わない。 ハラスメントを放置する。 安全に配慮しない。 こうした問題があれば、会社は改善しなければなりません。 しかし一方で、 「自分にとって不満がある会社=ブラック企業」 という意味で使われてしまうこともあります。 「休みが少ないからブラック」 「給料が安いからブラック」 「上司が厳しいからブラック」 「希望する福利厚生がないからブラック」 しかし、従業員によって「良い会社」の尺度は違います。 給与を重視する人。 休日を重視する人。 仕事の面白さを重視する人。 成長できる環境を求める人。 楽に働けることを求める人。 全員の「理想の会社」を同時に実現することはできません。 従業員の要望に応え続ければ、満足度は上がるのか? ここが経営者にとって重要なポイントです。 福利厚生を充実させること自体は、決して悪いことではありません。 問題は、 「不満を言われないため」に制度を増やし続けることです。 会社のお金には限りがあります。 給与を上げる。 休日を増やす。 人員を増やす。 福利厚生を増やす。 労働時間を短くする。 すべてにはコストがあります。 その原資を生み出しているのは、会社の事業です。 会社が利益を出せなくなれば、最終的には給与も雇用も守れません。 だから経営には、 「社員が望んでいるか」だけではなく、「会社として持続可能なのか」 という視点が必要です。 そして、もう一つ忘れてはいけないこと 会社が従業員に提供するものばかりが議論されると、 いつの間にか、 「会社は従業員に何をしてくれるのか」 だけの関係になってしまいます。 しかし労働契約は、本来一方通行ではありません。 会社は、 給与を支払い、 安全な職場を整え、 法律を守り、 働く環境を提供する。 一方、従業員には、 会社から求められた仕事を適切に行い、組織の一員として役割を果たすこと が求められます。 会社が考えるべきなのは、 「社員に何を与えれば文句を言われなくなるか」ではありません。 「会社は社員に何を約束し、その代わりに何を期待するのか」 を明確にすることです。 「社員満足」を経営目的にしない 従業員を大切にすることと、 従業員の顔色を窺うことは違います。 意見は聞く。 合理的な要望なら検討する。 改善すべきことは改善する。 しかし、最終的な判断基準は、 「不満が出るかどうか」ではなく、「会社として正しいか」 です。 「会社が社員に提供するもの」と「社員に求めるもの」をセットにする たとえば会社が、 「給与を上げたい」 と考えるのであれば、 同時に、 「そのためには生産性を上げる必要がある」 という話もします。 福利厚生を充実させるのであれば、 「会社として皆さんを大切にしたい。その一方で、皆さんにも○○という役割を期待しています」 と伝えます。 権利だけでも、義務だけでもない。 双方の役割を明確にすることが重要です。 「できない理由」を説明できる 従業員から、 「もっと休日を増やしてほしい」 と言われたとします。 できるなら実施すればよいでしょう。 できなければ、 「できません」でも構いません。 ただし、 「なぜできないのか」 「会社として何を優先しているのか」 「将来的にどうしたいのか」 を説明する。 従業員を大切にする会社とは、 何でも要求を受け入れる会社ではなく、判断の理由を誠実に説明できる会社 ではないでしょうか。 「ホワイト企業」の本当の意味を考える 残業が少ない。 休日が多い。 福利厚生が充実している。 給与が高い。 もちろん、どれも魅力的です。 しかし、それだけで良い会社になるわけではありません。 会社が従業員の顔色ばかり窺うようになれば、 注意すべきことを注意できない。 求めるべき成果を求められない。 問題行動にも毅然と対応できない。 そして最後には、 真面目に働いている従業員ほど不公平感を持つ会社 になる可能性があります。 「ブラック企業」という言葉に振り回されるより、 「私たちは、どんな会社をつくりたいのか」 経営者自身がその答えを持つことの方が、ずっと大切なのかもしれません。 続きを読む

「またトイレ?」休憩ばかりする従業員

専門情報

ある会社に、勤務中に何度も席を離れる従業員がいました。 朝礼が終わって30分するとトイレへ。 戻ってきたと思ったら、しばらくしてまたトイレへ。 その後も飲み物を買いに行ったり、少し休んだり。 一回の離席はそれほど長くありません。 しかし、一日に何度も繰り返されるため、周囲の従業員から不満が出始めました。 「またいないですよ」 「私たちは忙しくて休む暇もないのに……」 社長も気になっていました。 とはいえ、相手はトイレに行っていると言います。 「トイレまで会社が口を出していいものなのか?」 そう考えて、強く注意することもできずにいました。 ところが、ある繁忙日のこと。 みんなが忙しく働いている最中に、その従業員がまた席を立ちました。 社長はとうとう我慢できなくなります。 「またトイレ?」 「はい」 「もういいよ。そんなに仕事が嫌なら、もう会社に来なくてもいいから」 従業員は黙って帰ってしまいました。 社長としては、 「いい加減にしてくれ」という意味で叱っただけ。 ところが数日後、従業員から連絡が来ます。 「社長から『もう会社に来なくていい』と言われました。解雇されたと認識しています」 今度は会社側が慌てることになりました。 どう注意すればいいのか まず重要なのは、 「トイレの回数が多い=サボっている」 と直ちに決めつけないことです。 本人に健康上の事情などがあるかもしれません。 そのため最初に、 「最近、勤務中に席を離れることが多いようですが、何か事情がありますか?」 と確認します。 問題にするべきなのは、トイレそのものではなく、 離席によって勤務や業務にどのような支障が生じているかです。 たとえば、 「午前中だけで合計○分程度離席している」 「その間、電話を他の従業員が代わっている」 「作業工程が止まっている」 「他の従業員に負担が集中している」 という事実です。 事情を確認したうえで問題があるのであれば、 「トイレに行くな」ではなく、 「勤務時間中の離席によって業務に支障が出ているので改善してください」 と伝えるのが基本です。 「もう会社に来なくていい」は危険な言葉 社長としては、 「今日は帰れ」 「頭を冷やしてこい」 程度の意味だったかもしれません。 しかし、 「もう会社に来なくていい」 となると意味が変わってきます。 従業員から、 「会社から労働契約を終了すると言われた」 と主張される可能性があります。 後になって社長が、 「解雇したつもりではなかった」と言っても、 発言の内容や前後の状況などから、 解雇の意思表示だったのかが問題になることがあります。 勤務態度を注意していたはずなのに、 従業員の問題 → 会社の解雇問題 へと争点を自ら変えてしまうわけです。 アルバイトだったら? ここで経営者が陥りやすいのが、 「アルバイトなんだから、もう来なくていいでしょ」という考え方です。 アルバイトも労働者です。 したがって、 「バイトだから問答無用で明日から来なくていい」とはなりません。 ただし、アルバイトの場合には重要な確認事項があります。 無期契約なのか、有期契約なのか たとえば、 「期間の定めなし」 で雇っているアルバイトであれば、 会社からの解雇について基本的に解雇法理が問題になります。 一方、 「2026年4月1日~9月30日」 などの有期労働契約であれば、さらに注意が必要です。 契約期間の途中で会社側から辞めさせる場合には、 「やむを得ない事由」が必要とされるため、 むしろハードルが高くなることがあります。 「正社員じゃないから簡単に辞めさせられる」とは限らないのです。 逆に契約期間が満了する場面では、 更新の有無、 これまでの更新状況、 本人の更新への期待などを確認し、 雇止めの問題として検討する必要があります。 つまり、 正社員かアルバイトかという名称だけで判断してはいけません。 雇用契約の内容まで確認する必要があります。 では、会社はどうすればよかったのか このケースでは、社長が怒る前に「事実」を集めるべきでした。 ①離席の状況を客観的に確認する いつ、どの程度席を離れているのか。 業務にどのような支障が生じているのか。        ↓ ②本人から事情を聞く 「最近、離席が多いようですが、何か事情がありますか?」 健康上の事情などがないか確認します。        ↓ ③問題を具体的に伝える 「トイレに行きすぎだ」ではありません。 「あなたが席を離れている間、○○さんが毎回業務を代わっており、作業にも遅れが出ています」と、会社が問題としている事実を伝えます。        ↓ ④改善を求め、記録する 何を改善してほしいのかを具体的に伝えます。 改善されなければ、再度指導します。 重要な案件であれば、面談記録や指導書などを残します。        ↓ ⑤それでも改善しない場合 ここで初めて、就業規則、雇用契約、これまでの指導状況、問題の程度などを踏まえ、 懲戒・配置・契約更新・退職勧奨・解雇等の選択肢を個別に検討します。 「問題社員対応」で一番怖いこと この事例で本当に怖いのは、 最初は従業員側の勤務態度が問題だったということです。 ところが社長が感情的になって、 「もう会社に来なくてもいい」と言った瞬間、 「休憩ばかりしていた従業員」の問題だったはずが、 「会社から不当に解雇された従業員」という 別の問題に変わってしまう可能性があります。 正社員でもアルバイトでも同じです。 問題社員への対応で会社を守るために重要なのは、 「腹が立ったときほど、処分を口にしない」こと。 そして、 事実確認 → 事情聴取 → 指導 → 改善機会 → 記録 → 処分等の検討 という順序を守ることです。 問答無用の一言より、 正しい手順の積み重ねの方が、はるかに会社を守ります。 続きを読む

「正直者が馬鹿を見る会社」

関係づくり

ある会社に、AさんとBさんという二人の従業員がいました。 Aさんは真面目な社員です。 仕事でミスをすると、 すぐ上司に報告します。 「すみません。私の確認不足でした」 忙しい同僚がいれば手伝います。 お客様からクレームがあれば、 自分の責任でなくても一緒に対応します。 会社のルールも守ります。 一方、Bさんは少し違いました。 ミスをすると、 「それ、私がやったんでしたっけ?」 うまく他人の責任にします。 面倒な仕事を頼まれると、 「今ちょっと手いっぱいなので」 と言って避けます。 誰かが困っていても、 自分の仕事でなければ手を出しません。 しかし、成果が出たときだけは違います。 「この件、私もかなり動きました」 と上司にしっかりアピールします。 半年後、評価されたのはBさんだった 人事評価の時期になりました。 上司の印象はこうでした。 Aさんについては、 「真面目なんだけど、ちょっとミスが多いんだよな」 Bさんについては、 「大きな問題も起こさないし、結果も出している」 評価されたのはBさんでした。 Aさんは納得できません。 なぜなら、Bさんにもミスはあります。 ただ、報告していないだけだったからです。 Aさんがミスを正直に報告する。 → 記録に残る。 Bさんは黙って処理する。 → 問題がなかったことになる。 Aさんが困っている人を助ける。 → 自分の仕事が遅れる。 Bさんは手伝わない。 → 自分の仕事だけは早く終わる。 Aさんは面倒な仕事も引き受ける。 → トラブルに遭遇する機会も増える。 Bさんはリスクの高い仕事を避ける。 → 失敗が少なく見える。 そして会社は、目に見える「結果」だけで二人を評価していました。 やがて、Aさんが変わった ある日、Aさんが小さなミスに気づきました。 以前なら、すぐ上司に報告していたでしょう。 しかし、その日は手が止まりました。 そして思いました。 「正直に言ったら、また自分の評価が下がるだけじゃないか」 Aさんは黙って修正しました。 次に同僚から、 「ちょっと手伝ってもらえない?」 と頼まれたときも、 「ごめん。今忙しいから」 と断りました。 Aさんが悪い社員になったのでしょうか。 必ずしもそうではありません。 会社の中で「良い行動をすると損をする」と学習してしまったのです。 本当に怖いのは「悪い社員」ではない この状態を放置すると、 会社全体に一つのメッセージが広がります。 正直に報告するな。面倒な仕事は引き受けるな。他人を助けるな。失敗は隠せ。成果だけは自分のものとしてアピールしろ。 会社がそんな方針を掲げていなくても、 評価のされ方によって社員はそう学習します。 すると最初から問題のある社員だけでなく、 真面目だった社員まで行動を変えていきます。 これが「正直者が馬鹿を見る会社」の怖さです。 「良い結果」だけでなく「良い行動」が報われる会社にする 解決策は、 単純にAさんを褒め、 Bさんを叱ることではありません。 評価の仕組みそのものを見直します。 たとえば、ミスの「件数」だけを見るのではなく、 ミスを隠したのか、速やかに報告したのか。原因を分析したのか。再発防止まで行ったのか。 まで見ます。 同じように、個人の売上や処理件数だけでなく、 困難な仕事を引き受けた、 同僚を支援した、 情報を共有した、 後輩を育成した、 問題を早期に報告した といった、組織への貢献も評価します。 反対に、 責任転嫁、 問題の隠蔽、 情報の独占、 仕事の押し付け、 成果の横取り によって数字だけを作る行為は、 高評価につながらないようにします。 ただし、「良い人」を評価する制度にはしない ここは重要です。 「みんなに親切だから高評価」 では、人事評価が主観的になります。 見るべきなのは人格ではなく、仕事上の具体的な行動です。 たとえば、 「協調性がある」 ではなく、 「繁忙時にチームの業務を支援した」 「誠実である」 ではなく、 「問題発生後○分以内に上司へ報告した」 というように、できるだけ観察可能な行動に落とします。 会社には、経営者が作った就業規則とは別に、 社員が日々の経験から学んでいく「見えないルール」 があります。 「正直に言うと怒られる」 「仕事を引き受ける人ほど仕事が増える」 「責任を取らない人の方が出世する」 「他人を助けるより、自分だけ成果を出した方が評価される」 そんな経験が積み重なれば、 どれだけ立派な経営理念を掲げても社員は信じなくなります。 だからこそ、 良いことをした人が、損をしない。悪いことをした人が、得をしない。 これは単なる道徳論ではありません。 会社がどんな行動を増やしたいのかを、 評価と日々の対応によって社員に示すという組織設計の問題です。 そして究極的には、 「この会社では、真面目にやった方が得だ」 と社員が経験を通じて感じられる会社にする。 それができれば、 問題社員を一人ずつ取り締まる以上に、 問題行動そのものが生まれにくい職場に近づいていくと思います。 続きを読む