あしたの準備

パワハラ防止法 
傾向と対策

パワハラの防止を企業に義務付ける法律が施行されます。今回は、『パワハラ防止法』について、ご説明いたします。

パワハラという言葉の誕生

『パワハラ』という言葉が聞かれるようになったのはいつごろからでしょうか?もともと『パワハラ』という言葉は2003年に岡田康子氏が作り出した造語です。法律に定められた用語ではなく、どこからパワハラになるかの線引きも曖昧。そもそも同じ言動でも、人が変われば捉え方は変わってきます。

ですが、社会への浸透は迅速でした。全国にある「労働局」・「労働基準監督署」に設置された『総合労働相談コーナー』における相談件数1位は、かつては『解雇』でした。しかし今や『パワハラ』がそれをはるかに上回り、トップの回数を更新し続けています。

ただ、言葉自体は浸透しても、法整備は遅れていました。例えば、労働基準監督署に労働者が相談に行っても、話を聴いてアドバイスをするだけです。労基署はあくまで労働基準法違反の取り締まりをするところなのです。

『パワハラ』の解決方法

『パワハラ』の解決方法は基本的に裁判。しかし、パワハラが認められたとしても慰謝料の相場は低く、費用や時間などを考えるとまったく割に合いません。裁判外紛争という選択もありますが、制度上の欠点があり、そもそも在籍しながら揉め事を起こせば、会社にいづらくなり、退職につながりかねません。

そこで登場したのが『パワハラ防止法』です。日本の法律で初めて「パワハラ」という言葉が規定され、「パワハラはだめだ」と明確に述べたのです。

では、違反した場合はどうなるのでしょうか?

今回の法律では、あくまで『職場でのハラスメント対策の強化』を企業に義務付けただけで、罰則を伴う規定はありません。行われるのは、厚生労働大臣による、事業主に対する助言、指導、勧告だけです。

とはいえ、従業員から「社内に相談先がない」「相談しても何もしてくれなかった」といった通報があった場合に、これからは指導、勧告が行われ、事業主が勧告に従わなかった場合、その旨が公表される可能性があります。

現在はSNSで情報が一気に広まる時代。ユニオンなどが『パワハラ防止法違反』を世間に大々的にアピールすることで、ネット上に悪意のある書き込みが出るかもしれない。そうなると企業の信用失墜につながる可能性があります。

『パワハラ防止法』に対応した体制づくり

では、『パワハラ防止法』に対応した体制整備について考えてみます。厚生労働省が告示した「職場におけるハラスメント関係指針」には、具体的なパワハラ防止措置が記されています。

  • 企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと
  • 労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備すること
  • 職場におけるパワハラの相談を受けた場合、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うこと

このほかに、プライバシーの保護のために必要な措置を講じることや、パワハラの申告を理由に、労働者の解雇や不利益な取り扱いをしないことなどが企業に義務化されます。

もう少し具体的にみていきましょう。

①まず、社内方針を明確にします。

従業員は、基本的に会社の方針に合わないことはできません。そこで、組織のトップが「組織内でのパワハラを許さない」という強い意志を表明し、社内に周知するのです。

②ルール作りをします。

「パワハラを行ってはならない旨」の方針の他、パワハラが明らかになったときに懲戒処分を行うのか、行うとすればどのような懲戒処分とするのかを、就業規則などで規定します。『パワハラ行為』を明確に懲戒事由にしておかないと、問題社員が実際に現れたときに対応できません。

③相談に適切に対応するための体制づくりをします。

まずは職場の現状を把握するためにアンケートを行いましょう。「パワハラを見聞きしたことがあるか」「これまでパワハラに遭ったことがあるか」「どのような内容だったか」「誰かに相談したか」「どうやって解決したのか、または解決できなかったのか」などを、匿名で調査するのです。この調査を定期的に行うことで、徐々に従業員の意識が変わっていきます。

④研修、講習等を実施します。

研修・講習は、管理監督者と一般の従業員を別々に行うようにします。従業員は、『パワハラ』という言葉は知っていても、どこからがパワハラあたるかの線引きが分かっていないことがほとんどです。例えば、「強制=パワハラ」と考えている人。これでは『パワハラ』と『業務命令』の違いが判らなくなり、見当違いの不満を持つことにつながります。前提になる基礎知識を提供することで、紛争を未然に防げます。

⑤『相談窓口』を設置します。

相談窓口がない場合、「パワハラ防止法に違反している」として、労働局へ通報される可能性があります。企業規模が小さく、『窓口』や『担当』を決める余裕がない中小企業では、民間の内部通報窓口の外部委託を利用するのも手だと思います。

⑥事後の適切な対応

新たに会社に課された義務は、『ハラスメント事案が発生した際に速やかに対処すること』です。会社には従業員に対して適切な職場環境を提供する義務があります。それを怠ると従業員から『損害賠償請求』される可能性があるのです。

相談窓口では、『相談者』と『行為者』の双方から事実関係を確認し、場合によっては『第三者』からも事実関係を聴取します。その際はプライバシーに配慮し、問題が必要以上に知れ渡らないように注意します。社内や社外で噂になったら2次3次被害が発生するおそれがあるからです。

事実関係が確認できた場合、『加害者』に対しては、注意、配置転換、懲戒処分などを行います。その際に考慮するのがパワハラの様態・回数・経緯・目的・反省の有無などです。一方、『パワハラを受けた被害者』に対しては、必要な補償をおこないます。

調査の結果、パワハラに該当しなかった場合

調査の結果パワハラには該当しない、誤解だったといった場合は次のように対応します。

『加害者とされた人』に対して

結果を伝えた上で、どの行動に問題があったのかを明確にし、「誤解を生んだ原因」「今後誤解を招かないための対策」を話し合います。

『相談者』に対して

『パワハラに該当しない理由』を理解してもらえるように丁寧に説明し、『行為者』に対してどのような指導をおこなったのかを伝えます。自分達の主張を一方的に伝えるのではなく、質問を通して『気づき』を与えるような話し方をします。

なお、パワハラの相談や事実確認への協力をお願いしたことで不利益な取扱いをすることは、法律で禁止されています。

事件解決後は、『再発防止研修』などを行うなど、再発防止のための取組みを行います。

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