あしたの準備

本当に懲戒処分にしていいの?チェックすべき7つのこと。

『懲戒処分』とは、会社が従業員に対して行う制裁のことです。もし、あなたが管理職で、従業員の誰かに懲戒処分を課そうとしているのであれば、ここでの情報を参考にして「もう一度それが適切かどうか」を考えてみましょう。扱いを誤ると『訴訟』につながります。    

 

 懲戒処分が適正かどうかのチェックリスト

『懲戒処分』を行う前提として、その根拠を『就業規則』で定めておかなくてはいけません。これを『罪刑法定主義の原則』といいます。

 

罪刑法定主義の原則とは:
ある行為をした際の『罪』と、それに対応する『罰』をあらかじめ法律で定めなくてはいけないということ。

 

ただし、規定があっても何度も蒸し返すことは許されません。例えば、後になって「あの刑は軽すぎた」と、再度「懲役1年」を追加することは許されないのです。これを「一事不再理の原則」(二重処罰の禁止)と言います。  

 

『犯した罪』が1つであれば、『それに対する処罰』も1つだけです。   例えば、不注意で会社の車で事故を起こした人に対して、『譴責処分』として処理したのなら、後になって『減給処分』を追加できないのです。

 

一事不再理の原則(二重処罰の禁止)とは: 一度判決が決まれば、その罪では二度と罰することができないということ。

 

では、『犯した罪』が1つではなく、2つである場合はどうでしょうか。例えば、『暴行』で出勤停止3か月になった人に、後で『横領』が見つかったケースです。  

 

この場合、『処罰』も2つにできます。一度判決が決まれば、その罪では二度と罰することができません。しかし、『見逃していた罪』があったのであれば、後からその分を処罰できます。『暴行』と『横領』は別の行為。この場合、『蒸し返し』とはいいません。

 

注意が必要なのは『自宅待機』です。これは『懲戒処分』と考えた方がいいのでしょうか?  

 

結論から言うと、処分はできなくなる時と、できる時があります。『自宅待機』は、懲戒処分として行う場合と、業務命令として行う場合があるからです。

 

『自宅待機』を懲戒処分として行う場合、『出勤停止』といいます。この場合、会社は賃金を支払う必要はありません。『無給のままの自宅待機』という処分だからです。  

 

反対に、『自宅待機』を業務命令として行う場合、賃金を支払う必要があります。この場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」に当たります。基本的に平均賃金の6割を支払わなくてはいけなくなるのです。簡単に言うと、単に『勤務時間内の自宅待機』を命じているという位置づけです。  

 

ただし、この場合であっても賃金を払わなくてもいいケースがあります。『自宅待機』にする理由が、その従業員の不正行為の再発や証拠隠滅にあり、そうさせるのが必要不可欠である場合です。    

 

道理に合わないやり方で、人により『処分の重さ』を変えてはいけません。例えば、ハイパフォーマーには『口頭注意』しかしないのに、『ローパフォーマー』は『降格』にすることは許されません。『地位が高い社員』や『数字を挙げている社員』の問題行動を見逃していると、企業秩序が乱れる原因となるのです。  

 

平等待遇の原則とは:
道理に合わないやり方で、人により『処分の重さ』を変えてはいけないということ。  

 

問題が発生した後でルールを作って、遡って罰を加えることは許されません。これをやると、後々に何が「罪」となるのか分からないからです。  

 

人が「ある行動」をとろうとするとき、善悪はその時の法律で決めます。ですが、後になって『遡って過去に適用できる法律』を作れるのであれば、合法的に誰でも罰することができます。これでは法治国家と言えません。

 

不遡及の原則とは:
問題が発生した後で、その問題に対するルールを変えることはできないということ。    

 

行為に関与していない人を連座制で処分することは許されません。『懲戒処分』は労働者個人の行為に対して行う制裁だからです。   例えば、その日の売り上げが1万円合わない時に、合わない理由が分からないまま、全員に連帯責任を負わせることはできません。  

 

個人責任の原則とは:
制裁できるのは、行為に関与した人だけということ。  

 

処分の種類と程度は、釣り合ったものでなくてはいけません。例えば、わずかな時間の遅刻なのに『懲戒解雇』は不適切です。  

 

相当性の原則とは:
処分の種類と程度は、釣り合ったものでなくてはいけないということ。  

 

『弁明の機会』が与えられているのであれば、その機会を設けなくてはいけません。敵方の証言や先入観だけで重要な処分を決めたら、会社は大変な紛争リスクを背負うことになります。

 

適性手続きの原則とは:
就業規則などで決められた『懲戒手続き』に従わなくてはいけないということ。

 

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