あしたの準備 一度決めた労働条件を下げたい。トラブルを防ぐために必要な対応は? |
はじめに
コロナ禍で業績悪化し、賃金を減額しなくてはいけなくなった。そんなケースを考えてみます。
こうした場合、労働組合があるのであれば、労働協約を結ぶことで対応できます。しかし、ないのであれば、就業規則を変更することで対応するしかありません。実は労働条件は、就業規則を変更するだけで変えてしまうことができるのです。
ですが、実際のところ、こんなことが普通にまかり通ったら、会社は何でもやりたい放題です。そこで裁判所の登場です。司法が変更したことの『合理性』をチェックする。認められなければ、賃金減額自体も無効です。
労働条件を下げる。問題がないかどうかの判断基準。

では、その『合理性』。どのような基準で判断されるのでしょうか?
具体的には次の要素です。
①就業規則の変更で被る労働者の不利益の程度はどのくらいか。
②変更の必要性はどのくらいあるのか。
③変更後の就業規則の内容に相当性はあるのか。
④労働者の不利益を求めた分、代償として会社は何かを行ったか。
⑤労働組合等とどのような交渉があったのか。
⑥同じような出来事があった際、社会一般ではどのような対応をしているのか‥‥。
お聞きになって、『合理性』の判断基準が非常にあいまいだとご理解いただけたと思います。『合理性』が認められるかどうかをあらかじめ予測するのはホント難しい。
個別の同意をとっても安心できない
しかし、ここで何もしなければ倒産を待つことになるのかもしれない。そこで注目するのが従業員の個別の同意です。従業員としても会社が倒産するくらいなら減額に応じるという人もあるかもしれない。そう考えて、可能な限りの人から同意(同意書)を取るのです。多ければ多いほど訴訟に発展するリスクは小さくなります。
ただし、その同意自体の信憑性も問われます。例えば十分な説明もせずにサインをさせたとか、誤った情報を与えてサインをさせたとかであれば、賃金減額は無効だという話になります。
とはいえ、そんな説明を聞いても迷うと思います。どこまで説明すれば十分なのか、何をもって誤った情報と言うのかも、定義が抽象的なのですから。
『従業員から異議が出なかった、黙って聞いていた。だから従業員が同意した‥‥』そんな話で収まらないのです。
労働条件を一方的に下げる。そうした対応は、ひじょうに紛争化しやすい。専門家のサポートを受けた上で行うことをお勧めいたします。
LSO労務管理事務所 久野利英
他の事務所が避けたがる困難な課題に対処している事務所
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