あしたの準備 事業場外労働みなし労働時間制。仕組みと運用時の注意点。 |
『事業場外労働みなし労働時間制』とは
最近は新型コロナの影響で『テレワーク』を行う企業が増えました。そこで注目されることが多いのが『事業場外労働みなし労働時間制』です。
では、どのような制度なのでしょうか。
皆さんは法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超えて労働させた場合、割増賃金を支払う義務が生じることをご存じだと思います。簡単に言うと、従業員が会社の外に出て仕事をする場合、そこで働いた時間を『あらかじめ決めた時間』で働いたことにする制度です。
要するに、実態と異なっていても、『みなされた通り』に扱うということです。
例えば、ある日9時間働いても、『みなし労働時間』が8時間なら、『働いた時間』は8時間として扱われます。
この制度のメリット。それは、会社は、従業員がいかなる時間帯に、どの程度仕事をしたかを、適正に把握する必要がありますが、それが非常に簡単になるという事です。
バスガイドさんを例に考えてみます。彼女たちは月曜日には5時間、火曜には9時間と日によってばらばらの時間を働いています。同じコースであっても道路の渋滞などで帰る時間が変わってしまうのです。
ですが、『事業場外みなし労働時間制』が適用されているのであれば、いずれの日も8時間働いたということになります。
例えば道路が込んでいる日。10時間働いたとしても、ガイドさんは余分に働いた2時間分の残業代をもらえません。
逆に、道路が空いている日。6時間で帰れたとしても、会社はその時間分を控除できません。事実と違っていても、働いているとみなされている以上、覆すことができないのです。
採用されることが多い業種

では、この制度、どのような業種で採用されることが多いのでしょうか?
例えば、外回りの営業職、出張の多い職種、記者など取材が必要な職種です。
ただし、この制度を導入するためには前提条件があります。「会社の外」で働いていること、そして「労働時間を計算して決めることが困難」であることです。
もう少し具体的にみていきます。
1.「会社の外」で働いていること。
一言で「会社の外」といいますが、実務的には、『どこまでが会社の中で、どこからが外なのか』をもっとハッキリさせたくなるところです。
ここでいう会社の中とは、直属の上司など、時間管理をする監督者の目の届く範囲までを言います。
2.「労働時間を計算して決めることが困難」であること。
『労働時間の算定ができる』とは、具体的には『始業時刻』と『退勤時刻』、その両方の記録が残る状態であることです。
この2点から分かる事。それは、会社の外で働いている場合であっても、『始業時刻』と『退勤時刻』が何らかの形で分かるのであれば、『時間管理をする監督者の目の届く範囲』にあると言えることです。
例えば次のような場合です。
◎『直行直帰』であっても、携帯電話を通じて随時『連絡』・『指示』をしている場合。
◎従業員から携帯電話を通じて随時報告を受けている場合。
◎従業員から仕事中に報告も受けていなくても、業務計画書や報告書と対比させることで読み取れる場合等。
よく考えて下さい。現代では、通常『労働時間の算定が困難という状況』は存在しないのです。誰もが携帯を持っているからです。 ですから、この状況をよほど意識して作る必要があります。
では、具体的にどうすればいいのでしょうか? もし『営業社員』であれば、次の点に注意します。
◎従業員が持つ携帯電話は、「緊急連絡用」であることを明確にする。
◎仕事中、携帯電話の電源をオフにすることを認める。
◎上司は携帯電話を使って指示を与えない。
◎随時「業務報告」をさせない。
『みなす時間』を決める

次に『みなす時間』について考えてみます。
『事業場外労働みなし労働時間制』とは、仮に実態と違っていても、『みなされた時間』働いたことにしてしまうということでした。 この『みなす時間』とは、その仕事をするために通常必要となる時間のことです。原則的には『所定労働時間』となります。しかし、『所定労働時間を超える時間』とすることもできます。
例えば、「自分の業務はいつも8時間かかるよ」というのであればどうでしょうか?
この場合、「その仕事をするのに通常必要とされる時間」は、8時間ということになります。つまり、『みなし労働時間』は8時間です。
では、「所定労働時間は8時間だけど10時間かかるよ」という場合であれば、どうでしょうか?
この場合、「その仕事をするのに通常必要とされる時間」は、10時間ということになります。つまり、『みなし労働時間』は10時間。2時間余分に働いているのに、その時間の『残業手当』がつかないということです。
ですから、『その仕事をするのに通常必要とされる時間』を何時間とするのかは重要な問題です。労使間で紛争が起こる火種になる可能性が十分にある。このことを意識して決めなくてはいけません。
実際、『営業職』でこの制度の適用が争われた裁判例では、適用が認められた例はほぼありません。ほとんど会社が敗訴しているのです。
考えてみて下さい。明確で画一的な算定方法を見出すことは非常に困難なのです。同じ業務であっても、人によって、天候や交通事情等によって、必要な時間は変わってくるのですから。
この制度の導入に当たっては、専門家にご相談になることをお勧めいたします。
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