退職させることから考えない問題行動対応

ある小規模企業の社長から、こんな相談がありました。

一人の従業員が、

業務上の指示や会社の判断に不満を持つたび、

社長に長文のメールを送りつけてくる。

「経営者として失格だ」
「こんな会社では誰もついてこない」
「取引先にも会社の実態を知ってもらった方がいい」

電話でも強い口調で責め立てられることがあり、

その従業員から連絡が来ること自体に強い負担を感じる。

社長の本音は、

「もう辞めてもらいたい」というものでした。

しかし、ここでいきなり退職勧奨を行えば、

「会社に意見を言ったから辞めさせられた」と主張される可能性があります。

しかも、この従業員は重要な取引先との業務にも関わっています。

感情的に対立すれば、

顧客対応や社内の他の従業員にも影響が及ぶおそれがありました。

まず、従業員の主張と問題行動を分けました。

会社への意見や不満を述べること自体と、

人格を攻撃すること、

威圧的な連絡を繰り返すこと、

取引先への働きかけを示唆すること

は別問題です。

そこで、過去のメール、電話記録、業務上のやり取りを時系列で整理。

「気に入らない社員」という評価ではなく、

いつ、どこで、何を言ったのか。
会社は何を問題としているのか。
今後、何を改めてもらう必要があるのか。

を客観化しました。

そのうえで面談を行い、

本人の言い分にも耳を傾けながら、

会社として許容できない行為を具体的に伝え、

今後の行動改善を求めました。

さらに、口頭注意だけで終わらせず、

面談内容と会社からの改善要求を記録として残しました。

しかし、その後も同様の人格非難や威圧的な言動が繰り返されました。

そこで初めて、

「このまま雇用関係を継続することがお互いにとって本当に望ましいのか」

という話し合いに移りました。

会社が一方的に結論を押しつけるのではなく、

これまでの経緯と会社の考えを説明し、

本人の意思を確認しながら退職条件について協議。

最終的には双方が合意する形で雇用関係を終了することになりました。

元の事例は、

退職させる決意 → 証拠を集める → 対立を避けながら退職交渉 → 弁護士同席 → 合意退職

という流れです。

しかし重要なのは、

途中で本人が改善すれば、

退職させる必要そのものがなくなることです。

会社の目的は「問題社員を辞めさせること」ではありません。

問題行動を止め、会社を正常な状態に戻すこと。

退職は、そのために検討される選択肢の一つにすぎません。

私たちは、法律だけで結論を出すのではなく、

人・現場・会社・法律の4つの視点から、会社にとって最も適切な着地点を考えます。

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