
飲食店を経営するBさんは、一人のベテラン社員に期待を寄せていました。
仕事は早く、経験も豊富。
新人教育も任せていました。
ところが、数か月経っても、新人がなかなか育ちません。
ベテラン社員は、面談のたびにこう報告します。
「あの新人は覚えが悪いです。」
「何回教えてもできません。」
「正直、向いていないと思います。」
その話を聞くたびに、Bさんは「新人に問題があるのだろう」と考えていました。
しかし、ある日、別の社員から思いがけない話を聞きます。
「実は……新人が質問すると、『そんなことも分からないのか』と人前で叱るんです。」
「新人が小さなミスをすると、すぐに課長へ報告します。」
「逆に、自分に問題があったことは話しません。」
さらに、新人本人と面談すると、
「質問するのが怖い。」
「失敗するくらいなら、自分で判断しない方がいいと思ってしまう。」
と打ち明けました。
Bさんはようやく気付きます。
新人の能力だけが問題だったのではない。
育成の仕方そのものにも課題があったのです。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
本当に自信のある人は、自分の能力を証明しようとはあまりしません。
成果がその人を語るからです。
一方で、
自分の評価に不安を抱えている人ほど、
- 他人の欠点を探す
- 人前で叱る
- 「あいつはダメだ」と言い回る
といった行動で、
自分の存在価値を示そうとしてしまうことがあります。
Bさんは考えました。
「この社員だけの問題なのだろうか。」
「もしかすると、評価の仕組みそのものが、この行動を生み出しているのではないか。」
解決のヒント
この問題を解決するためには、
「誰が悪いか」を管理するのではなく、「育成の過程」を管理することが重要です。
例えば、
- 新人にどのような説明をしたのか。
- 理解を確認する機会を設けたのか。
- 質問しやすい雰囲気をつくっていたのか。
- ミスが起きた後、一緒に改善策を考えたのか。
- 指導内容を記録し、成長を振り返っていたのか。
こうした過程が見えるようになると、
「新人が悪い。」
「教えたのにできない。」
という感覚的な議論ではなく、
育成の事実で話ができるようになります。
また、評価制度も重要です。
もし、「自分だけ成果を出せば評価される」という仕組みであれば、
人を育てるより、自分を目立たせる行動が有利になってしまいます。
一方、
「部下が成長したこと」
「チーム全体の成果が向上したこと」
まで評価対象にすれば、
競争ではなく育成へ意識が向きやすくなります。
