
「言われたことは完璧。でも、お客様は離れていった。」
ある食品工場を経営するIさんの会社での出来事です。
ある日、お客様から大量注文が入りました。
製造現場は慌ただしくなります。
現場のリーダーは社員に言いました。
「このリストどおりに製造してください。」
社員たちは、一つひとつ確認しながら、ミスなく作業を進めます。
ところが、その途中で一人の社員が気付きました。
「このままでは、納品時間に間に合わない。」
しかし、その社員は何もしませんでした。
「指示された仕事は終わらせました。」
それが自分の仕事だと思ったからです。
結果として、納品は大幅に遅れ、お客様から厳しいお叱りを受けました。
その数日後。
同じような状況が再び起こります。
今度は別の社員が、
「このままだと間に合いません。」
と現場責任者へ相談しました。
さらに、
応援できる部署へ自分から声をかけ、
配送担当とも連絡を取り合い、
納品時間を調整しました。
多少予定は変わりましたが、
お客様には迷惑をかけずに済みました。
社長は考えました。
「同じ会社で、同じ指示を受けたのに、なぜこれほど結果が違ったのだろう。」
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
人は、評価される方向へ努力します。
もし会社が、
「言われたことを正確にやる人」
だけを評価していれば、
社員は指示どおりに動くことを最優先にします。
一方、
「仕事の目的を理解し、自分で考えて行動した人」
まで評価すれば、
社員は目的から逆算して行動するようになります。
つまり、
行動を変えているのは社員の能力だけではありません。
会社が何を評価しているかなのです。
解決のヒント
もちろん、
言われたことを正確に実行する力は、とても重要です。
品質管理や安全管理では欠かせません。
しかし、それだけでは変化に対応できない場面があります。
だからこそ、
社員には、
「何をするか」
だけでなく、
「何のために、この仕事をするのか。」
まで伝えることが大切です。
そして評価制度も、
- 指示を守ったこと
- 品質を維持したこと
だけではなく、
- 問題を早く見つけたこと
- 自ら相談したこと
- 目的を達成するために工夫したこと
も評価の対象にしていく。
そうすることで、
社員は「言われたことだけをやる人」から、
「会社の目的を一緒に実現する人」
へと成長していきます。
