そもそも解雇とは

 

労働者が会社を辞める際の2つのカタチ

 

労働者が会社を辞める際、二つのカタチがあります。

 

A)労働者自身の事前の申告により雇用契約が終了するケース

B)会社側の意思によって一方的に雇用契約が終了するケース

 

Bが解雇です。解雇は、一方的な労働契約の解約ですから、労働者の承諾は必要ありません。ですが、日本の労働法制下では、従業員を簡単に解雇できません。それを知らず、安易に解雇の手続きを進めてしまった場合、裁判などになります。多大な時間・労力・金銭的な支払いを強いられます。

 

解雇の種類

 

今回は「解雇」をテーマにお話いたします。

 

解雇は紛争化するリスクが非常に高いです。紛争化すれば、SNS上で炎上したり、合同労組ユニオンがやってくるかもしれません。そんなことになれば、会社イメージ・ブランド力・社会的信用の失墜がとても大きく、『収益』低下につながります。取引先との関係も悪化します。

 

解雇の種類

    • 『懲戒解雇』
    • 『諭旨解雇』
    • 『普通解雇』
    • 『整理解雇』

 

順にみていきます。

まず『懲戒解雇』です。解雇の中で最も最も厳しい措置とされています。

 

懲戒解雇になった人のペナルティ

 

懲戒解雇は、『会社内の秩序を著しく乱した労働者』に対して、ペナルティとして行われます。この場合、いわゆる即時解雇も可能です。従業員としての身分を失い、退職金も支給されず、さらに『解雇予告』または『解雇予告手当』の支払もなされないということです。

 

懲戒解雇が行われた場合のペナルティ

  • 従業員としての身分を失う。
  • 退職金が支給されない。
  • 『解雇予告』(または『解雇予告手当』の支払)がなされない。
  • 労働者に一生ついて回り、再就職の際に大きな不利益をもたらす。

 

『懲戒解雇』になった場合、次に勤務する会社でその旨を申告する必要があります。つまり、労働者に一生ついて回り、再就職の際に大きな不利益をもたらします。

 

『懲戒解雇』を行う前に!

 

『懲戒解雇』は、従業員にとっていわば死刑宣告に等しいと言えます。ですから、社長の主観だけでは決定はできません。正確にいうと、社長の判断で行うことはできても、裁判では不当だとして、ひっくり返される可能性があるということです。

 

まず、あらかじめ就業規則でルール化された公平な基準が求められます。ここに書かれていない事由では処分できないのです。

 

そもそも、絶対に『懲戒解雇』にできるという案件は非常に少ないです。それだけ解雇はハードルが高いです。例えば、解雇トラブルになれば、『起こした行為』そのものだけではなく、その方の役職、責任の重さ、業種、仕事環境など、色々な要因で解雇が有効か無効かの判断が変わってきます。

 

  • 懲戒解雇は普通解雇に比べ、格段に『有効性のハードル』や『紛争リスク』が上がる。後日、解雇された従業員が「不当解雇」として会社に裁判を起こすケースが非常に多い。

  • 即時解雇をするには労働基準監督署長の認定が必要。この認定基準は非常に厳しく、認定が下りなければ解雇予告手当の支払いが結局求められる。
  • 仮に適正な懲戒解雇であっても、労働者が納得しなければ裁判になる。「時間」と「労力」と「お金」が消える。
  • 裁判所は『懲戒解雇』の有効性を『普通解雇』よりも厳格な態度で審査する。

 

『懲戒解雇』が可能なケースであっても、あえてそのようなリスクは犯さず、『普通解雇』で納めている会社が大半。

 

懲戒解雇は、『解雇予告』または『解雇予告手当』の支払が必要ない

しかし、解雇予告(または解雇予告手当の支給)をする。

 

裁判所が審査すること。

 

  • 労働者の「規律違反行為の程度」が、解雇されてもやむを得ない程、悪質かどうか。
  • 会社が解雇した労働者に対して、指導や警告を段階的に行い、労働者が改善するチャンスを与えたか。他

 

『諭旨解雇』

 

「諭旨解雇」とは、労働者が、最も重い処分である『懲戒解雇』に相当する程度の問題を起こしているにもかかわらず、会社の酌量で懲戒解雇より処分を若干軽減した解雇で済ますというものです。本人に反省が見られる等の情状酌量の余地がある場合に行われます。

 

「諭旨」とは、理由を諭し告げるという意味。会社が強制的に処分を下すのではなく、会社と労働者が話し合い、あくまでも両者納得の上で解雇処分を受け入れるという形です。

 

「諭旨解雇」の場合の取り扱い

 

  • 会社が労働者に『退職届』や『辞表』の提出を提案し、それでも退職届や辞表が提出されなかったときに、『懲戒解雇』が行う。
  • 「解雇予告手当」や「退職金」も支給されるケースも多い。

 

『普通解雇』

 

『普通解雇』は、社員の勤務態度、仕事の能力などを理由に行われる解雇です。労働者には、雇用契約に定められた『契約内容』の履行が求められます。これを「債務」といいます。

 

もし、この債務を行えなかった場合に行われる最も重い処分が「普通解雇」です。この債務と義務の線引きが難しいです。

 

これは「解雇」全般に言えることですが、現在の労働法では、「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」が求められます。仮に就業規則が定めている解雇事由に該当していたとしても、当然に労働者を解雇できるわけではなく、解雇が『権利濫用』でないかが問題になるのです。

 

解雇が無効になる場合(解雇が『権利濫用』となる場合)

 

『解雇の原因となった行為』が軽微で、これで解雇になるのは酷な場合

この会社における『過去の同様のケース』における取扱いとバランスを欠く場合

※裁判等におけるこの判断基準は、「基本的に労働者に有利」というのが専門家の共通認識。

 

『雇用保険』の取り扱い

 

A)『懲戒解雇』の場合▶『雇用保険』が手続き後、3か月もらえない。

※『会社都合退職』には含まれない。

 

B)『普通解雇』の場合▶すぐもらえる。

※「会社都合退職」となる。

※もらえる期間も長めになるケースが多い。

※『退職金』は減額にされることがある。

 

『整理解雇』

 

最後に『整理解雇』です。企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇です。

 

『普通解雇』や『懲戒解雇』が行われるのは、労働者側に原因がありますが、『整理解雇』は労働者ではなく、会社側の『経営上の理由』から行われるものです。ですから、適切かどうかの判断のハードルは高くなります。

 

『整理解雇』は、裁判例が充実し、判断基準が確立されています。

具体的には次の4つです。

 

『整理解雇』の有効性の判断基準

 

①人員削減の必要性

②解雇を回避するための努力を十分しているか

④手続きの相当性

③対象者の選定方法の合理性

 

『人員削減の必要性』とは、簡単に言うと、『経営上の理由により、人員を削減する必要があるかどうか』そもそもあるかということです。この判断は、裁判所によって一律ではなく、それぞれの事案に応じた判断がなされています。一般的に、『人員削減を行わないと必ず倒産する』というところまでは要求されていません。『債務超過』の状態だったり、『赤字』の状態が慢性化している場合、人員削減の必要性が認められることが多いです。

 

最後に

 

『解雇』は人の問題です。人である以上、『法律論』を理路整然と唱えれば解決するほど、単純ではありません。『知識』に加えて、『相手の心情に対する配慮』も求められます。

 

解雇が適正かどうかの判断は、専門家にご相談になることをお勧めいたします。

 

そもそも経営者の多くの方は、とにかくリスクをゼロにすることを目標にしてしいます。しかしながら、現実の社会においてリスクがゼロになることは絶対にあり得ません。

 

経営者の方が取るべき姿勢

 

①予防:リスクを最小化する。

②備え:リスクが具現化したときの対策も打う。

 

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