
ある製造会社で、女性社員から「上司の言動が苦痛です」と相談がありました。
内容を聞くと、ハラスメントの可能性は否定できません。しかし、社長はすぐに行動へ移せませんでした。
「もし誤解だったらどうする。」
「管理職を外せば現場が回らない。」
「大ごとにしたくない。」
「もう少し様子を見よう。」
そう考え、二人をこれまでと同じ部署で働かせ続けました。
ところが数週間後、女性社員は出勤できなくなり、会社には代理人弁護士から通知が届きます。
会社が責められた理由は、ハラスメントが事実だったかどうかだけではありません。
『疑いが生じたにもかかわらず、会社が被害拡大を防ぐ措置を取らなかったこと』
が大きな問題になったのです。
社長は肩を落としながら言いました。
「証拠が揃うまで待つのが公平だと思っていた……。」
しかし、その”待つ”という判断が、結果として会社の責任を重くしてしまいました。
解決のヒント
ハラスメントが疑われる段階では、事実認定よりも先に、安全確保を優先することが重要です。
- 行為者と被害者を一時的に別の環境にする(席・部署・勤務時間など)
- 双方から速やかに事情を聴取する
- 調査中であることを明確にし、公平性を保つ
- 調査経過と対応内容を記録として残す
「まだ事実は分からない」ことと、「何もしない」ことは同じではありません。
会社には、被害の拡大を防ぐための適切な初動対応が求められます。
