解雇予告手当 |
はじめに |
私は、『基本的に解雇はしない方がいい。トラブルの原因でしかない』と考えています。日本では、解雇ができる場合が極めて限定されているからです。手順を踏んで、慎重に慎重を重ねた上で行わなくてはいけません。
『解雇』に関連してトラブルが多い部分は、「解雇予告手当」です。計算方法が間違っていたり、本人に金額の根拠を伝える際に説明があいまいだったりすることが多いのです。
解雇を行う際のパターン |
「解雇」には、「解雇のルール」があります。大局的にみて、2のケースが想定できます。
A) 30日間勤務してもらう。条件は、解雇の予告。 B) 即時辞めてもらう。条件は、平均賃金30日分の支払(解雇予告手当)。 |
解雇する場合は、このどちらかを選択します。
A)30日間勤務してもらう。条件は、解雇の予告。
『解雇』は、会社が一方的に行うものであり、労働者からすれば時間的・金銭的な準備が何もできていない状態に行われます。そこで労働基準法は、『30日前の解雇予告』を義務付けました。『再就職のための時間的余裕』を与えさせたのです。
メリット 1)約1カ月、通常通り仕事をしてもらえる。 2)引き継ぎも済ませることができる。 ※対価として、これまで通り30日分の賃金を支払う。 |
デメリット 1)『労働の品質』が低いこと。 2)『解雇される人』が、周囲にどのような影響を与えるか。 |
B)即時辞めてもらう。条件は、平均賃金30日分の支払(解雇予告手当)。
『解雇予告手当』を支払うのであれば、即時解雇ができます。『解雇の予告』がいらないのです。つまり、『再就職のための時間的余裕』ではなく、『金銭的な余裕』を与えたということです。お金だけ払って、その労働者の労働を放棄しました。
実は、AとB、それぞれを組み合わせることもできます。例えば、『10日分の平均賃金』を支払うのであれば、『退職日』を20日後とできます。つまり、両方を足して30日分ということです。
メリット 会社が『1カ月分の社会保険料の負担』をしなくて済む。 |
社会保険料は、1カ月単位。日割計算はしません。『月の末日』に在籍しているかどうかで、その月の保険料が発生するのかしないのかが決まります。
A)『退職日』が『末日』の場合 『その月の社会保険料』▶その月の会社の負担がある。
B)『退職日』が『末日』以外の場合(『月の途中』の場合) ・『解雇予告手当』▶1日分増える。 ・通常の『給料』▶1日分減る。 ・『労働力』▶1日分減る。 ・『その月の社会保険料』▶その月の会社の負担がなくなる。 ※社会保険料の会社負担額は社員1人あたり、月額3〜4万円。 |
例えば、6月26日に解雇の予告をする場合です。
A)6月の末日、つまり、6月30日まで勤務してもらう場合
1カ月分の社会保険料がかかる。
B)『月末の前日』、つまり、6月29日までの勤務の場合
社会保険料はかからない。
このように対応すれば、『解雇予告手当』は1日分増えます。ですが、通常の『給料』は1日分減ります。そして、3〜4万円の社会保険料分、会社は得します。
『解雇予告手当』の取り扱い |
イレギュラーな出費である、『解雇予告手当』は、『社会保険料』の徴収の対象になりません。
『給与』ではなく、『退職所得』だからです。
『所得税』と『住民税』については、税制上の優遇処置があることはありますが、発生します。
・『社会保険料』▶発生しない。 ・『所得税』▶発生。 ・『住民税』▶発生。 |
『解雇予告手当』がいらなくなるケース |
『解雇予告手当』の負担が一切いらなくなるケースもあることはあります。『懲戒解雇』の場合です。この場合、即時解雇ができます。
要するに『突然、当座の生活費も渡さず』に、ある日を境に会社から放り出すのです。『懲戒解雇』とは、『社内の秩序を著しく乱した労働者』に対してペナルティとして行うものです。『解雇予告制度』によって保護をする必要もないくらい、『重大で悪質な行為』をしたということです。
但し、この『解雇予告手続きの省略』は、会社の判断だけで行うことはできません。『労働基準監督署』の認定が必要なのです。そうしないと、結局『労働基準法』に違反したとして罰せられます。この認定のことを『解雇予告の除外認定』と言います。
ポイント 『懲戒解雇』として『即時解雇』を行うケースであっても、会社は恩情で、通常通り『解雇予告手当』を支払うことが多い。 |
『懲戒解雇』は、紛争化するリスクが高い処分。しかも『除外認定』には時間が掛かり、『手続き』も大変。申請をしても、認定を受けられないケースが多いです。
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