管理職自身が「怒鳴ってしまった」と後で後悔していた

「大声を出してしまった」その日の帰り道

ある会社で、課長のOOさんは、繁忙期の対応と重なる締め切りに追われていました。

そんな中、部下のPPさんが、確認すれば防げたはずのミスを起こしてしまいます。取引先への謝罪対応を終えた直後、張り詰めていた緊張の糸が切れました。

「何度言えば分かるんだ!」

自分でも驚くほどの大声がオフィス中に響きました。

一瞬にして職場は静まり返り、PPさんは顔をこわばらせたまま俯いてしまいました。周囲の社員も気まずそうに視線をそらします。

その日の帰り道、OOさんの頭を占めていたのは、怒りではなく後悔でした。

「指摘した内容は間違っていなかった。しかし、あの伝え方は完全に間違っていた。」

そう考えるたびに胸が痛みました。


翌朝、OOさんはPPさんを別室に呼びました。

「昨日は大声を出してしまって、本当に申し訳なかった。ミスは指摘しなければならなかったと思う。でも、あの伝え方は間違っていた。」

PPさんは驚いた表情を浮かべましたが、次第に表情が和らいでいきました。

その姿を見て、OOさんはもう一つ、大切なことに気づきました。

自分は、PPさんが嫌いだから怒鳴ったのではなかった。

むしろ逆でした。

さらに振り返ると、原因はPPさんのミスだけではありませんでした。

連日の残業、終わらない業務、取引先への対応……。

心にも時間にも余裕がなくなっていたことが、最後の一押しになっていたのです。

そこでOOさんは考えました。

「期待を持つこと」と「怒鳴ること」は、まったく別のことではないか。

相手に成長してほしいという思いは大切です。

しかし、
その思いが怒鳴るという形で伝わってしまえば、
相手に届くのは期待ではなく恐怖です。

恐怖では、人は一時的に動くことはあっても、自ら考え、成長する力は育ちません。

それ以来、OOさんは、自分が感情的になりそうなときほど、一度立ち止まるようになりました。

「今、自分は怒っているのか。それとも期待しているのか。」

そう自分に問いかけるだけで、言葉の選び方は大きく変わるようになりました。


この事例から学べること

① 怒鳴る原因は、怒りだけではありません

管理職が怒鳴ってしまう背景には、

「成長してほしい」
「成功してほしい」
「失敗してほしくない」

という期待責任感が隠れていることが少なくありません。

だからこそ、「怒鳴ってしまう自分は最低だ」と責めるだけでは、根本的な解決にはなりません。

「期待」と「伝え方」は分けて考えることが大切です

期待することは悪いことではありません。

問題なのは、その期待が感情となって噴き出し、怒鳴るという形で表現されてしまうことです。

相手に届けたいのは期待であり、恐怖ではありません

③ 怒鳴りそうなときは、自分の状態を確認する

怒鳴る直前は、相手だけでなく、自分自身も限界に近づいていることが少なくありません。

[「疲れていないか。」
「焦っていないか。」
「余裕を失っていないか。」

まず自分の状態に気づくことが、感情をコントロールする第一歩になります。

④ 怒鳴ってしまったら、できるだけ早く向き合う

もし感情的になってしまったら、時間を空けずに本人へ伝えましょう。

謝るべきことは、
ミスを指摘したことではなく、怒鳴ってしまったこと(伝え方)です。

その一言が、失われかけた信頼関係を取り戻すきっかけになることがあります。

⑤ 本当のリーダーシップは、怒鳴ることではなく導くことです

「どうでもいい相手なら怒鳴らない。」

確かに、その側面はあります。

しかし、本当に相手の成長を願うのであれば、怒鳴ることではなく、相手が前を向いて成長できるように導くことが大切です。

期待が大きい人ほど、言葉は強くなりがちです。

だからこそ、期待の大きさではなく、伝え方の質が、優れた管理職をつくるのです。