それってパワハラ? |
『労働者の方』であれば、「厳しくしかられたけど、それってパワハラ?」と感じることもあると思います。実は、『指導する側の上司も、パワハラと言われるのが怖くて委縮していることが多い』ってご存じでしたでしょうか。
誰だってトラブルに巻き込まれるのは避けたいです。『パワハラの批判』を受けるかもしれないと考えれば、「余計なことは言うまい」ということになります。
この状態は問題であることは、『労働者の立場』であっても分かっていただけると思います。この状態は『組織の腐敗』につながります。『あるべき指導』も、『部下の育成』もできないからです。
パワハラに該当するかは誰が決める? |
問題は、パワハラの定義があいまいなことです。説明が難しかったり、ネット上には間違った情報もあふれています。『どこまでが指導で、どこからがパワハラなのか』、その分岐点をはっきりさせる必要があります。
まず前提として押さえて頂きたいのは、「ある行為がパワハラに該当するかどうか」は、『労働者』が決めることでも、『社長』が決めることでもないということです。最終的に話がつかないのであれば、決めるのは『裁判所』ということになります。
『強制』したらパワハラ? |
まず、「どういう行為がパワハラに該当するか」、その定義からです。
【定義】職場におけるパワハラ
次の3つの要件を「すべて満たす」行為。 1.『優先的な関係』を背景とした言動 2.『業務上必要かつ相当な範囲』を超えたもの 3.労働者の『就業環境』が害されるもの |
この中の一つでも該当しない場合、例え「厳しい口調」であったとしても、パワハラにはなりません。
3つの要件を順にご説明いたします。
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- 「優先的な関係を背景とした言動」とは
- 「職務上の地位」、「人間関係」、「専門知識」など、何らかの『優位性』を背景に行われる言動であるということです。
- つまり、パワハラというと、『上司から部下へのいじめ』というイメージを持つ方が多いのですが、先輩・後輩間や同僚間で問題になることもあります。
例)『営業成績のよい社員から、悪い社員への言動』▶パワハラに該当することがある。
例)『経験年数が長いリーダー格の社員から、新入社員への言動』▶パワハラに該当することがある。 |
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- 「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とは
まず『強制したらパワハラ』というのは誤りです。そもそも「労働」において、指示・命令は、避けられません。
ですが、それらは、「業務上必要かつ相当な範囲」で行わなくてはいけません。
『教育』・『指導』の名目であってもパワハラに該当する可能性がある場合
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- 『濫用』とは
権限を本来の目的とは異なることに用いることです。
- 『逸脱』とは
、『平均的な基準』から偏ることです。「ルールから外れた」という道徳的裁定が含まれます。
精神的・身体的苦痛を感じたらパワハラ? |
「最近、色々な事柄に『ハラスメント』がつくようになり、逆にそれを悪用する人が増えてきた」と管理職側の方は言います。個人個人が拡大解釈し、「自分に合わない事」、「嫌な事」は全部ハラスメントにしてしまうというのです。「会社の方針が気に食わない」とか、「上司の発言が気に食わない」といった理由です。
それでは、もし自分が「精神的・身体的苦痛」を感じたら、本当にどんな言動もパワハラと認められるのでしょうか?
結論から言うと、「相手がパワハラと思えばパワハラになる」というのは誤りです。厚生労働省は踏み込んで解釈をしています。
パワハラにあたるかどうかを誰の基準で決めるか
A) 『個人の主観』で決まる▶× B) 『平均的な労働者の感じ方』で決まる▶◎ |
実際、『ハラスメント問題』は『人間の感情』がベースとなっている問題です。同じ言動であっても、人が変われば、ハラスメントになったり、ならなかったりします。
「業務の適正な範囲」に含まれる事柄を強制する場合
相手側がどのように感じようと、パワハラにはならない。 ※そもそも『仕事』は、それでお金をもらうわけで、多少の苦労は当たり前。 |
『強く怒鳴られた』場合
ケースによる。
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- 「労働者の就業環境が害されるもの」とは
例えば、「就業意欲が低下する状態」、「業務に専念できないなどの影響が生じる状態」であるかどうか、ということです。
典型的なパワハラ |
次に、『典型的なパワハラの類型』を上げます。『類型』ですので、該当しない場合でもパワハラだと認められるケースがあります。
A)身体的な攻撃
B)精神的な攻撃 C)人間関係からの切り離し D)過大な要求 E)過小な要求 F)個への侵害 |
A)身体的な攻撃
直接的な暴力▶×(明らかに指導の範囲を超えているため)
間接的な暴力▶× 例)物を投げられる 例)「胸ぐら」を掴む 例)頭を小突きながら注意する 例)座っている椅子の脚を蹴る 例)机を両手で強くたたきながら注意するなど |
B)精神的な攻撃
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「給料泥棒」「おまえが使う社用車のガソリンはドプに捨てているようなものだ」等の言葉を毎日のように浴びせる行為です。
裁判所が注目しているところ(➠『客観的に判断できる要素』)
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普段から言葉遣いが粗い人だと、「口癖だからパワハラじゃない」と反論するかもしれませんが、それでも『業務遂行のために必要ではない暴言』であればパワハラに該当します。
C)人間関係からの切り離し
例)『他の同僚』を従わせて、特定の1人を無視させ、挨拶も交わさず、必要な情報もわざと知らせない行為。 |
人間関係には、合う・合わないはあると思います。ですが、度があります。あからさまに「嫌がらせ」の意図がある場合は、パワハラと判断されます。
D)過大な要求
例)「業務上明らかに不要なこと」を強制する行為。
例)「能力や経験を超える無理な業務」を課す行為。 |
単純に「仕事量が多い」ケースとの違いは、そこに『見せしめ』や『懲罰』の意図があり、納得できる説明がなく、限度を超えた要求が長期間続くということです。
但し、『労働者の立場の方』である場合、『過大な要求かどうかの判断』は慎重にしてください。
会社は、「成長を促すため」として、あえて『現状よりも高いレベルの業務』を任せることがあります。この場合、貴方が『辛い状況にどのように対処するのか』を見ています。これは貴方に対する期待の表れであり、むしろ将来のために歓迎すべき状態です。
このように、『パワハラに当たるかどうか』は、労働者の属性、心身の状況、関係性、その言動の目的、経緯など、様々な角度から総合的に判断されます。
E)過小な要求
例)『能力や経験とかけ離れたレベルの低い仕事』を命じる。
例)懲罰的に仕事を与えない。 |
当然ですが、『仕事が少ない』のはすべてパワハラというわけではありません。「業務上の合理性」が判断基準になります。
例えば、「労働者の能力に応じて、業務内容や量を軽減する行為」はパワハラではありません。
F)個への侵害
業務上の必要性がないのに、プライベートに立ち入って管理しようとしたり、「不適切な発言」をしたりする行為です。
例)家族や恋人のことを根掘り葉掘り聞く。
例)休日の彼らの予定を取り止めさせて自分の引っ越しを手伝わせる。 |
実際のところ、同じ言動でも、人が変わればパワハラの線引きは変わってきます。
判断基準は「信頼関係の有無」ともいえます。
裁判所がパワハラと認定したらどうなる? |
最終的に裁判所がパワハラと認定した場合、会社としては『損害賠償責任』を負うことになります。
ですが、認定されたとしても、それがすなわち『民事上の慰謝料請求を発生させる程度』であるとは限りません。
また、『刑事上の犯罪に当たる程度』であるとも限りません。
パワハラ ≠ 違法行為 ≠ 民事上の慰謝料発生 |
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