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従業員が、病気や怪我の後遺症で身体が不自由になった場合、その程度によっては仕事に影響が出てきます。こうしたことを理由に解雇することは認められるのでしょうか。

 

今回は「病気やけがによる解雇」についてご説明いたします。

 

会社には『解雇を行う権利』があります。ですが、当たり前ですが、無制限ではありません。労働契約法16条で条件を課しているのです。簡単言えば、『合理性』と『社会通念上の相当性』です。

 

『合理性』と『社会通念上の相当性』といったところで、あまりに漠然としています。具体的にどのような対応が求められるのかを一緒に見ていきましょう。

 

まず、病気や怪我をした原因が『業務上の災害』である場合です。このケースでは、解雇は大変難しくなります。職場環境のストレスが原因で『うつ病が発症』したというのであれば、『業務との関係性』が認められるケースがあります。

 

この場合、『療養のために休む期間』と、職場に復帰した後の30日間は、一定の要件を満たさない限り、解雇できません(労働基準法19条1項)。

 

具体的には、『平均賃金の1200日分』を支払うか、もしくは療養が始まって3年たった後、『傷病補償年金』を受け取る状況になった場合でないといけないということです。

 

この『解雇制限』は非常に強力です。仮にその従業員が休んでいる間に、当人が悪質な業務上横領をしていたことが発覚したとしても、解雇できないくらいです。

 

ですが、病気や怪我が『業務上の災害』が原因で起きたのでないのであれば、扱いが変わります。

 

ただ、『入社時の雇用契約で職種が特定されている場合』であれば、条件付きで、解雇が認められるケースもあります。

 

なぜ、入社時の雇用契約で職種が特定されていれば特別扱いになるのでしょうか。

 

実は、『ほとんどの人』が当たり前のことすぎて気づいていない事実があるんです。それは、会社と従業員の間で結ばれる『雇用契約』とは、いわゆる買い物をするときと同じ、『契約』であるということです。

 

簡単に言えば、会社が仕事を提供し、従業員はその提供された仕事を行って給料をもらうという内容です。

 

ですから、病気や怪我で『それまで就いていた仕事』ができなくなったのであれば、そのままの状態では『会社と約束した労働契約上の義務』を果たしていないことになります。これは問題です。

 

例えば、職種を『トラック運転手』と特定して採用された労働者が、プライベートで起こした事故の後遺症でトラックを運転できなくなった場合、「トラックに乗る」という「労働契約上の義務」を果たせなくなります。この場合、解雇が認められる可能性が出てくるのです。(カントラ事件・大阪高裁平成14年6月19日)

 

逆に言えば、『雇用契約』で職種が特定されていない場合であれば、解雇はかなり難しくなるということです。会社は、『従来通りの仕事』をさせるのをあきらめて、『その体で出来る別の業務』に配置転換してあげるなどの対応が求められるのです。

 

その他、「その従業員のこれまでの勤務態度」、「年齢」、「家族構成」、「社内における、過去の同様の事例でどのように対応してきたのか」等、詳細な検討も必要になります。

 

例えば、本人が『他の業務』であればできると言っていて、しかも、実際に「配置替えできる、希望通りの業務」があるのであれば、それを叶えてあげなくてはいけません。(片山組事件・最高裁平成10年4月9日)

 

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要するに、病気や怪我を理由に、従業員の解雇を強行するというのであれば、具体的に次の点から『解雇の正当性』を主張・立証しなくてはいけません。

 

  • まず、その従業員の抱える障害の程度が、「就業規則上、解雇事由に該当していること」の証明です。
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解雇は、基本的に『就業規則に書かれている、解雇事由』のどれかに該当していなくてはいけません。

 

  • 『労働者が業務に耐えられる状態にないということ』、『回復の可能性がないこと』の証明です。

たとえ会社が「もはや業務ができない」と判断したとしても、本人からしてみればまだ働けると考えているのであれば、解雇の撤回を求めてきます。この場合に必要になる証明です。

 

具体的には、『診断書』・『産業医や主治医の意見書』・『同僚・上司の陳述書』などです。

 

  • 『解雇を回避する努力』をしたことの証明です。具体的には、労働者の傷病または障害に対する配慮です。具体的には、会社は、産業医から意見を聴き、労働者に対してできる限りの配慮を行ったものの、それでも解雇せざるを得なかったことを主張・立証します。

 

その状況を証明できるのは、産業医からの意見書、時間外勤務や重作業を禁止する、または軽減する内容の業務命令書、負担軽減を目的に配置転換を行ったことを立証できる辞令、休職命令書、他の代替業務がないことを立証できる人事担当者の陳述書などです。

 

  • 業務上の負傷・傷病ではないことの証明です。従業員側から『業務上の傷病』であるという主張がなされたのであれば、そうではないと証明しなくてはいけません。
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  • その証明となるのは、まず、タイムカードや出勤簿です。これで過重な労働でなかったことを証明できます。その他、同僚や上司の陳述書も有効です。産業医や主治医の意見書・診断書なども役立ちます。

 

なお、解雇には、別に『解雇の予告ルール』があります。対象となる従業員に『備え』ができるように、原則的に30日前の予告を求める決まりです。