知らない間に

セクハラ加害者!

セクハラ被害者!

はじめに

 

「そんなつもりはなかったのに、知らない間に加害者になっていた」という場合がないように、 また、そのようなトラブルが発生した時に『労務担当者』の方が適切に対応できるように、『セクハラ』について最低限の知識を身につけておくことが大切です。

 

『セクハラ』のご説明をさせて頂くにあたって、『セクハラ被害の相談者』を『松本さん』と呼ばせていただきます。仮名ですが、身近に感じていただくためです。なお、セクハラには、女性から男性に対するものも含まれますが、『松本さん』は女性とさせていただきます。

 

そもそもセクハラとは

 

『セクハラ』は『男女雇用機会均等法』で規制されています。ですので、会社側は労働者からの相談があった場合に対処する義務があります。

 

『セクハラ』とは(某法律事務所の定義)

『セクハラ』とは、「性的」な「相手が嫌がる行為」

 

 

セクハラは、『同じ行為』であっても相手によって感じ方に違いがある。

(『ある言動』が『セクハラ』になるかどうかは、その人の『主観』や『解釈』で変わる)

 

 

  • 被害者に当たる人の主張を素直にすべて聞いていたら、まじめで頑張っている社員を首にしてしまうケースもありえる。
  • 「自分自身も、そんなつもりはなかったのに知らない間に加害者になっていた」ということもある。

 

セクハラ問題が会社にもたらすリスク

 

以下のようなものがあります。

 

  1. A) 使用者責任を理由とした損害賠償責任(民法715条)。

B) 職場環境配慮義務違反を理由とした損害賠償責任。

  1. C) メンタルヘルスの問題。
  2. D) 労働災害の問題。

E) 強制わいせつやストーカー,暴行脅迫や傷害事件としての刑事事件化。

 

何がセクハラに当たるのか

 

『セクハラ』の種類

  • 『対価型セクハラ』
  • 『環境型セクハラ』

 

「強制わいせつ罪」にあたるような身体的接触は最早『セクハラ』の次元ではありません。立派な犯罪です。これは区別してお考え下さい。

『対価型セクハラ』

 

『松本さん』の意に反する性的な言動があり、それに対して『松本さん』が拒否や抵抗したところ、報復として『嫌がらせ』を受けること。

 

※『嫌がらせ』の例

解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て 不利益な配置転換など。

 

 

「セクハラに当たるかどうか」と悩む人はいない。

被害者の精神や肉体を傷つける度合いが高く、場合によっては、強姦罪、強制わいせつ罪などに当たる場合もある。

 

加害者は『確信犯的な人間』。

言葉で注意しても心根を改めることは期待できないと思われる。

 

 

【具体例】対価型セクハラ

 

    • 事務所内において、『上司』が『松本さん』に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、解雇すること。
    • 出張中の車中において『上司』が『松本さん』の腰、胸などに触ったが、抵抗されたため、不利益な配置転換をすること。
    • 営業所内において、『上司』が、日頃から『松本さんに関する性的な事柄』を公然と発言していて、それに対して抗議されたために、降格にされること。

 

『環境型セクハラ』の定義

 

『松本さん』の意に反する性的な言動があり、それにより就業環境が不快なものとなったために、自分の能力の発揮に重大な悪影響が生じている状態。

 

※『対価型セクハラ』に該当しないすべてのケース。

 

【具体例】環境型セクハラ

 

  • 事務所内において『上司』が『松本さん』の腰、胸などに度々触ったため、苦痛に感じて就業意欲が低がること。
  • 『同僚』が取引先で『松本さんに関係する性的な情報』を意図的かつ継続的に流布したために、『松本さん』が苦痛に感じて仕事が手につかなくなること。
  • 事務所内にヌードポスターを掲示しているため、『松本さん』が苦痛に感じて業務に専念できなくなること。
  • 『松本さん』に結婚や出産に関しての話を聞くこと
  • 『松本さん』に性的な事実関係、恋人の有無などをたずねること
  • 『上司』が、部下である『松本さん』をデートに誘うこと
  • 『松本さん』に出産に関しての話を聞くこと

 

グレーゾーンが存在するところ

 

お聴きになっていて、「これもセクハラ?」とお感じなった方も多いと思います。

 

A)『対価型セクハラ』

  ▶グレーゾーンは存在しない。

 

B)『環境型セクハラ』

「相手に危害を与える思惑」があるかないかで、さらに分類。

 

a)「加害の意図」を持っているケース(『意図的セクハラ』)

  ▶グレーゾーンは存在しない。

 

b)「加害の意図」がないケース(『無自覚セクハラ』)

  ▶グレーゾーンが存在する。

 

 

実はこの『環境型セクハラ』において、唯一グレーゾーンが存在します。境界線は、「加害の意図」。

 

『セクハラ成立の要件』

 

  • 以下の2つの両方を満たすことが必要。
  • ①『松本さん』がセクハラだと感じること。
  • ②『松本さん』がセクハラだと感じたことに合理性・妥当性があること。

 

会社で『セクハラ被害の相談者』が出た場合、『実際にセクハラに該当するか』を、その都度判断します。

 

①『松本さん』がセクハラだと感じること。

『松本さん』がセクハラと感じている以上、その行為はセクハラになります。ただし、判断の基準は個人差があるため、「平均的な女性労働者の感じ方」を基準にすることとしています。

 

②『松本さんがセクハラだと感じたことに合理性・妥当性があること』。

『合理性・妥当性』の判断基準

 

  • 判例に基づく価値観・・(過去の裁判例との類似性)
  • 社会的な価値観・・・・(現代の常識(例えば、男女平等思想)に反していないか)
  • 会社の価値観・・・・・(自社の社風、伝統、社則等から見て承認されるかどうか)

 

例えば、事務所内にヌードポスターを貼るのは、貼った人にセクハラの意図がなかったとしても現代の常識から考えて、明らかにおかしいです。

 

ですが、総務の人間が、『松本さん』に結婚や出産に関しての話を聞くことは、ケースによっては許されるかもしれません。

 

無自覚セクハラをしないために

 

自分の行為がセクハラと誤解されないか不安な方は、今後、次の点を注意して下さい。

 

  • 『親しさを表すつもりの言動』であったとしても、『気が付かないうちに相手を不快にさせてしまうこと』があると知ること。
  • 「この程度のことは相手も許容するだろう」という勝手な憶測をしないこと。
  • 「相手と良好な人間関係ができている」と勝手な思い込みをしないこと。

 

 

社長の頭を悩ますのは、『意図的セクハラ』を起こす人物は、たいてい社内において重要人物であることです。

 

『まったくの新人』が社内でセクハラを引き起こすことは通常あり得ません。セクハラが悪いことであることと知っていても、それを行っている・・、つまりセクハラは、『自分には力があって「少々のこと」をしても問題視されないという自信がある人』が起こる行為と言えます。

 

つまり、社内でセクハラ事件が発生した場合、社長の頭に「会社のために、この人物を失いたくない」という心理が働くことが予想できます。

 

被害者ができること

 

職場でセクハラを受けたときに『松本さん』がまずできることは何でしょうか。

 

『セクハラの解決』に正解はありません。一般論で言うなら、以下の通りです。

職場でセクハラを受けたときに被害者ができること

  • 加害者に「嫌であることをはっきりと伝えること」
  • 会社または「加害者の上司」に報告すること
  • 「社内外の相談窓口」を利用すること

 

セクハラなどのハラスメントは、『会社が問題を把握していたかどうか』が争点となります。会社側は労働者からの相談があったら、『再発防止措置』を講じる義務があるからです。

 

セクハラ問題で注意すること

 

セクハラには、様々なレベルがあります。

 

これまでご説明させて頂いた基準に基づいて、セクハラに該当したとします。

 

ですが、それがすなわち『民事上の慰謝料請求を発生させる程度』であるとは限りません。

また、『刑事上の犯罪に当たる程度』であるとも限りません。

セクハラ≠違法行為≠民事上の慰謝料発生

 

小野薬品工業(パソナ)事件

『仮にセクハラに該当し、相手が不快に感じたとしても、『セクハラに該当する行為』が全て、直ちに金銭による賠償を要する民法上の不法行為に該当するものではない』。

 

『セクハラ対応の鉄則』は被害者女性を守ることです。ですが、セクハラは一般的に人目につかないところで行われることが多い。そのため、『セクハラを立証する客観的な証拠』がなく、結局、本人の言い分だけの場合も少なくありません。

 

そういうときに会社として『一方的に加害者の男性を批判する』のは危険です。

 

相手の男性から「いいがかりだ。根拠を示せ」と反論されたら、なおさら苦しい思いをすることになるからです。

 

裁判で勝利する側

 

× 真実を言っている人

 

 証拠が揃っている人

 

裏付けは、やはり基本です。

 

逆に、『被害者の方』にとっては、この状況は到底許せないと思います。専門家など、第三者の協力を得るようにしてください。

 

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